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リア家の人々 の商品レビュー

3.7

14件のお客様レビュー

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2019/01/16

形骸化する家父長制の家族で暮らす父と三人娘とその周囲の人間の心の動きの機微と、戦後から昭和40年代前半にかけての社会の大きなうねりとをまったく同じ手つきで見事に描き出す。どちらが主でどちらが従でもない。橋本治にしか書けない小説。彼がこの三部作を経てどのステージに進むのか楽しみだ。

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2010/09/25

橋本氏らしい1冊。戦後、昭和の時代の家族のあり方を今理解し行うのはもう無理 作品の紹介 もの言わぬ父と、母を喪った娘たちの遙かな道のり―。公職追放と復職。妻の死と夫の不実。姉娘の結婚と父への愛憎。燃え盛る学生運動と末娘の恋―。ある文部官僚一家の相克を、時代の変転とともに描きだし...

橋本氏らしい1冊。戦後、昭和の時代の家族のあり方を今理解し行うのはもう無理 作品の紹介 もの言わぬ父と、母を喪った娘たちの遙かな道のり―。公職追放と復職。妻の死と夫の不実。姉娘の結婚と父への愛憎。燃え盛る学生運動と末娘の恋―。ある文部官僚一家の相克を、時代の変転とともに描きだし失われた昭和の家族をよみがえらせる橋本治の「戦後小説」。

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2010/09/24

戦後、公職追放を受けたものの、復帰し、文部官僚一筋に生きた役人中の役人、文三とその娘3人の家族の物語。 読み終えると、崩壊する家族を描いているような気がするけど、そうではない。描かれているのは明治から昭和への時代の波に乗って、生き抜いた普通の現代家族だ。 家でも仕事でも物言わ...

戦後、公職追放を受けたものの、復帰し、文部官僚一筋に生きた役人中の役人、文三とその娘3人の家族の物語。 読み終えると、崩壊する家族を描いているような気がするけど、そうではない。描かれているのは明治から昭和への時代の波に乗って、生き抜いた普通の現代家族だ。 家でも仕事でも物言わぬ父と、家から付かず離れずな関係を維持する娘たち。その娘たちも生きた時代によって、家に対する考え方は3者3様。特に学生運動の影響を受けた3女は、仕事も恋愛も親の扶養も自分で選ぶことができる、まさに現代の女性。 娘3人という設定はシェークスピアの「リア王」と同じだが、文三の存在感は暴君、リア王には遠く及ばない。それこそが、今の時代の父親像なのだ。ちょっと悲しいけど。

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2011/09/18

明治生まれの砺波文三とその家族の話。文三は帝国大学を出て文部省に入省した。戦争を経て公職追放、そして復職。昭和の時代を描きながら、東京オリンピック、ベトナム戦争、大学紛争、などの背景がわかり感慨深かった。☆4つは付けたけれど決してうれしい読書とはいえなかった。日本に巣食うどうしよ...

明治生まれの砺波文三とその家族の話。文三は帝国大学を出て文部省に入省した。戦争を経て公職追放、そして復職。昭和の時代を描きながら、東京オリンピック、ベトナム戦争、大学紛争、などの背景がわかり感慨深かった。☆4つは付けたけれど決してうれしい読書とはいえなかった。日本に巣食うどうしようもなさの根っこが、あれもこれもと綴られている。文三のような男はめずらしくは無かったのかもしれない。家庭では口数少ない家長。自分を語る言葉は無く、家族に対して何か聞きたくても返される答えを怖れて何も聞けない。情けない。意気地がない。官僚の秩序の中で安定して疑問を持たない文三。わからないことを理解しようとしない。理解できないことには無関心である。今にも続く哀しい日本のメンタリティ。読んでいて脱力した。誇りをもてない日本だ。橋本治が書き著した昭和は、ノスタルジックでかたずけずに、葬りさられようとしていた当時の人たちの気持ちのありようをわかりやすく浮かび上がらせてくれた。その時その時でずるしたり、放ったらかしにしたことがあって、今の日本のいやな所に続いてきているのだなと思う。読みごたえがありました。

Posted byブクログ