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黄衣の王 の商品レビュー

3.7

5件のお客様レビュー

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2024/01/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 あまりにも有名な怪奇小説なので一度読んでみたいと思っていた。タイトルしか知らなかったので連作集であったことには驚く。謎めいた書物、黄衣の王とそれにまつわる奇怪な話の数々であり、それぞれの話にあるふんわりとした繋がりが示唆されふことで不穏な雰囲気が蓄積されていくような読み味。最後まで黄衣の王自体は内容不明正体不明のまま、周りの人間を破滅させていくという最後まで謎だらけで不思議かつ不気味な雰囲気がまとわりついていたと思う。作中にある内容の示唆は大体、一度読み始めると取り憑かれてしまうほどの面白さ美しさを備えつつも悍ましいものであると、読んだものが悉く奇怪かつ凄惨な結末を迎えること、そして謎めいた用語と断片のセリフのみである。どうしようもなく惹きつけれてしまう存在であり、現実を侵食し実際に関連する印や事物が出現して害し始めるほどの謎めいた書物、黄衣の王。それに読者である自身も魅入られていくような気分であった。  もう一つの作品として魂を屠るものというボーイミーツガール魔術バトルsf長編小説も収録されている。主人公とその友人である女妖術師達の軽やかな感じと、詳しい取材に由来する異国情緒あふれた彼女らの慣用句や言葉遣い比喩などが、作中で恐ろしげに描かれつつも魅力的な東洋の国々に対する冒険心をくすぐらせる部分がとても印象的。一番好きなのはヒロインに東洋やイスラムに関する笑い話を聞かされて、文化の違いゆえに笑いどころがわからないシーン。気まずいような微笑ましいような雰囲気がよく伝わる。また初めの方に結構日本軍や日本人が出てくるのも驚いた。怪奇小説作者としてしか知らなかっがこの作者がこうした作品も書いていたことは知らず色々と新鮮であった。

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2022/06/08

悪夢と狂気的妄想を主題にした短編集。社会の悪いものを全部「東洋の神秘」のせいにしちゃう超能力バトルものの中編も収録されている。

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2022/01/22

 読んだ者に狂気を齎す、その不道徳的な内容から世界中で排撃され、各国の政府からは発禁処分を受けた悍ましい戯曲『黄衣の王』とは――。  ラヴクラフトがあの『ネクロノミコン』を生み出すイメージソースとなり、後にラヴクラフトやダーレスによってクトゥルフ神話に取り込まれた『黄衣の王』が、...

 読んだ者に狂気を齎す、その不道徳的な内容から世界中で排撃され、各国の政府からは発禁処分を受けた悍ましい戯曲『黄衣の王』とは――。  ラヴクラフトがあの『ネクロノミコン』を生み出すイメージソースとなり、後にラヴクラフトやダーレスによってクトゥルフ神話に取り込まれた『黄衣の王』が、強烈な存在感を与える小道具として登場する4作品に加え、チェンバーズの怪異小説家としての集大成である長編『魂を屠る者』を加えた5編を収録した、チェンバーズが著した怪異小説の傑作集。  訳者解説にもありますが、本書は怪異作家としてのチェンバーズをリスペクトすることを目的としているため、収録内容が原著と大きく異なっています。原著から先の4作品以外をばっさり落として、代わりに怪異作家としての集大成である伝奇ホラー長編を収録しています。しかし、やはりオリジナルの『黄衣の王』も読んでみたいですね。 --------------------------------------------------------- 『評判を回復する者』  精神病院から退院した男が再び精神病院に強制入院させられるまでの顛末を著している。はたして彼は、『黄衣の王』を読んだために狂ったのか、それとも読む前から狂っていたのか。 『仮面』  『黄衣の王』と、生物を大理石のようにしてしまう溶液の存在が破滅的な結末を予感させるが、その実、ギリシャ神話のような美しさを感じさせる物語である。 『ドラゴン路地にて』  『黄衣の王』を読んでしまった"わたし"が、生ける神の手に落ちていくまでを著している。きっと"わたし"は、教会を訪れた時点で落ちていたのだろう。 『黄の印』  4作品のうち、物語としては最も完成されていて読みやすいものになっている。『黄衣の王』に『黄の印』と、クトゥルフ神話においてはハスターを彩る重要なアイテムが登場するのだが、これも後から遡って神話体系に組み込まれたという経緯。 『魂を屠る者』  魔王を奉じる暗殺教団で、巫女として修行を積んだ主人公が、愛と自由と正義のため、世界の破滅を企む教団の妖術師たちとオカルト・バトルを繰り広げる伝奇ホラー長編。100年も前の作品なので現代人の感覚だと闘いの描写に物足りなさを感じるかもしれないが、むしろ100年も前にこのようなサイキックSFのような作品が書かれていたと考えれば、当時としては先鋭的な作品と言えるだろう。  なお、暗殺教団の元ネタはイスラム教の暗殺者教団なので、『アサシンクリード』シリーズや『Fate』シリーズのプレイヤーならお馴染みの用語が所々で出てくるので、プレイ経験のある人なら読みやすいかもしれない。

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2018/07/31

クトゥルフ神話の世界において「ネクロノミコン」や「無名 祭祀書」などと並び紹介されることの多い、読むと発狂する という戯曲「黄衣の王」。チェイムバーズの短編集を読んだ ラブクラフトによってクトゥルフ神話に取り込まれることに なったのだが、その元となった短編集のうち「黄衣の王」に ...

クトゥルフ神話の世界において「ネクロノミコン」や「無名 祭祀書」などと並び紹介されることの多い、読むと発狂する という戯曲「黄衣の王」。チェイムバーズの短編集を読んだ ラブクラフトによってクトゥルフ神話に取り込まれることに なったのだが、その元となった短編集のうち「黄衣の王」に 触れている4編とそれとは別の長編「魂を屠る者」をあわせ 収録した日本独自の構成である。 目的であった短編4本は雰囲気もあり悪くないのだが、長編 はどうも今一ついただけない感じ。当時としてはかなり突出 したオカルト作品なのかも知れないが、今となっては単調さ が目立つように思う。キャラクターも今一つ魅力に乏しいし 少々残念な読後感であった。 ラブクラフトが人が体験する事件を通じて宇宙的スケールの 恐怖を描こうとしていたのに対し、チェイムバーズは恐怖を 体験した人間そのものに興味があった、そんな印象だった。

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2015/01/21

長編に幾つかの短編を組み合わせた、ちょっと変わった構成の傑作集。 本書のメインとなる長編『魂を屠る者』は、ある種のオカルト冒険活劇で、あまり怪奇小説という読後感ではない。が、当時の東洋趣味というか、イメージとしての『東洋の神秘』がよく解るテイストで面白かった。 対する短編は割と正...

長編に幾つかの短編を組み合わせた、ちょっと変わった構成の傑作集。 本書のメインとなる長編『魂を屠る者』は、ある種のオカルト冒険活劇で、あまり怪奇小説という読後感ではない。が、当時の東洋趣味というか、イメージとしての『東洋の神秘』がよく解るテイストで面白かった。 対する短編は割と正統派の怪奇小説。どちらが好みかというと短編だったので、出来れば短編……というか、短編集『黄衣の王』を全訳して欲しいなぁ。

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