日本民族学概論 の商品レビュー
民俗学を学ぼうとする人のための教科書的な本。 最後の方には調査の仕方(準備から取材先へのマナー、調査終了後のフィードバックまで)丁寧に解説されている。 これから本格的に勉強したい人へ向けたメッセージの中で印象に残ったのが、自分の研究テーマを見つけるに際しての福田アジオのメッセー...
民俗学を学ぼうとする人のための教科書的な本。 最後の方には調査の仕方(準備から取材先へのマナー、調査終了後のフィードバックまで)丁寧に解説されている。 これから本格的に勉強したい人へ向けたメッセージの中で印象に残ったのが、自分の研究テーマを見つけるに際しての福田アジオのメッセージで、「柳田國男や折口信夫をはじめ多くの先学の著書を批判的に読むことで学ぶことが第一の作業である。」とあったことだ。柳田國男自身も「故郷七十年」で、自分(達)が民俗学という学問を立ち上げるというところまで体系化したので、これからは更新の人たちがどんどん自分の説を批判して高めていってくれたらいい、といったことが書かれている記載があった。 民俗学を勉強するまでは柳田國男を読まないことには始まらないくらいの印象しか持っていなかったが、現在はまず導入・教科書としておすすめされるのはそういった先達に触れながらわかりやすく解説し、「彼はこう言っているが、この研究にはこれが足りない」などの批判も述べている書である。 大学で十分に勉強して来なかった私は「ああこういう風に学問は発展していくんだな」とやっと感じることができてきた。また、そういう発展させていく余地があるからこそフィールドワークへ出てみたいという夢も膨らんだ。 実際の調査の仕方なんて最後に出てくるのだから、知識を付けた後、やる気まで引き出してくれるという構造になっている。 以下印象に残ったこと抜き出し。 ○親子心中は日本独特。日本人は「私が悪いのです」「皆に申し訳ない」など内罰的な考えをする人が多い。→かつてに比べて減ってはいるのかもしれないが確かに心中が出てくる小説やエンタメは多いし、それを美しく耽美的に描くものも多い。 ○マチトビの話。頭は冠婚葬祭あらゆる場面で中心となっていた。「成立はおそらく近世の火消し制度に由来するものだろうが」との記述がある。→これは、「炎々の消防隊」の新門紅丸大隊長を思い出した。浅草だし…。 ○憑き物筋は西日本、特に中国・四国地方に多い。→金田一孝輔シリーズもこの手の話は岡山県ほかこの地方ですね。 ○宗教の発展の話。まず日本の中で芽生えた祖霊信仰があり、そこに神道(の原型)や仏教が既存の祖霊信仰に寄り添う形で発展した。そのため寺の住職が神社の祭祀を管掌することもあった。しかし明治政府の国家神道政策や神仏分離政策の中でわかりにくくなってしまった。→よく今の日本人は寺と神社の違いもわからないとか宗教が違うことを意識していないと批判することが多いが、(そのような面は否定できないところもあるが)本来は「ごちゃまぜ」が自然だった時代・地域があったことを考えると今の深く考えずに寺も神社も受け入れる気持ちは自然なことではないかと思った。 ○神に扮する話。神がかりになって神に扮して舞う芸能を神態というが、その時は仮面をつける。仮面をつけると異常な心理状態となって人間技とは思えないほどの力が出たり長時間の舞を舞ったりすることがある。→これは、零〜月蝕の仮面〜の仮面と同じ原理。真実味が増してますますあの世界観に惹かれて胸熱。
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民俗学の概説書です。 以前読んだ『民俗学を学ぶ人のために』(世界思想社)では、民俗学の方法論についての考察に全体の約半分のページ数があてられていたのに対し、本書は民俗学的な事実の説明が大部分を占めています。 民俗学を学んでみたいと考えている読者が、そこでどのようなことが研究さ...
民俗学の概説書です。 以前読んだ『民俗学を学ぶ人のために』(世界思想社)では、民俗学の方法論についての考察に全体の約半分のページ数があてられていたのに対し、本書は民俗学的な事実の説明が大部分を占めています。 民俗学を学んでみたいと考えている読者が、そこでどのようなことが研究されているのかを知るために適当な内容ではないかと思います。
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