水の女 の商品レビュー

中上健次【著】

2023/10/04

鷹を飼う家
怒涛の終盤に思わず「オイオイオイオイ」と口をついて出ていた。鳳仙花にあるような繊細な情景描写が少なく、人間の動物としての獰猛さが目立つような作品。びっくりしちゃったよ。

2014/08/10

短編集。「赫髪」「水の女」「かげろう」「鷹を飼う家」「鬼」。
鷹に食わせるための鶏の首、発情した雌犬、馬喰の引く牛という不穏なモチーフの上から薄皮一枚重ねたように描かれる、男女の性愛。畜生の生の節理と何ら変わらぬ如き、今日も明日も変わらぬ男女の生活が、若い濃厚な性を中心に描かれる。
人間と畜生を紙一重で別けるように思えるのは、山に見られているという意識、けがれを取り除いてくれるとする井戸の水への信心。だがこれらこそが破滅に追い込むという皮肉、そこを中上流に甘味な毒として仕上げている。
1977年～1980年ころの中上健次の仕事は、奇跡と呼びたくなる。