沿岸 の商品レビュー
約束の血4部作の第1部。 2部は映画、3部は舞台で、それぞれ体験。 今回の1部で「約束の血 4部作」と括られる意味がわかった気でいます。血は血縁のことがメインかな、と。実際に流れる血も多いですが… 本作は、灼熱の魂(2部の映画化作品)より、もっと直接的に、戦争下での残虐な性暴力...
約束の血4部作の第1部。 2部は映画、3部は舞台で、それぞれ体験。 今回の1部で「約束の血 4部作」と括られる意味がわかった気でいます。血は血縁のことがメインかな、と。実際に流れる血も多いですが… 本作は、灼熱の魂(2部の映画化作品)より、もっと直接的に、戦争下での残虐な性暴力、残虐な生きたままでの人体損壊行為(もちろん殺人に至ります)のシーンがあります。よくこんなことを思いつくな…となんとも言えないきもちになりましたが、おそらく実際の戦地ではもっと酷い行為が行われているかも…とも思ってしまいました。 それは加害者が邪悪だからではなく、戦争という異常事態下で、みんなが狂わされてしまっているから…と思います。 戦争は、よくない。 さて、変わった話です。 現実と映画撮影のシーンがゆるく混ざる…これはどう解釈するのか… むしろ死んだはずの父親が話したり(腐臭を放っているのに!)、その父の死体を炎天下何日も連れて歩く…ありえない…でも、戦禍ではあり得るのか?私が知らないだけなのか…考えさせられます。 そして、これもまた幽霊のような、アーサー王の騎士も登場…なのに、不思議じゃないのが不思議… いろいろな形で親を失う、母国を失う、愛する者たちを失う、奪われる…そういう話にも感じました。 戦禍の中でも、富裕で、下品な話が好きな…という人が出てきます。悲しい。 その他象徴的なこと。 登場する父親が、実の子以外(ジョゼフィーヌ)の父親にもなったり。 シモーヌの電話帳。 アンティゴネー。 たぶん作家だったサベの父親。 盲目の老人。 海に葬られたくないと懇願する(既に死んでいる)父親。 騎士からの卒業。 群れの守り人 最後の父親の独白、「運び去る」のリフレイン… 森フォレでもキーワードのひとつだった「決して忘れない」 亡くなったたくさんの人々の名前を記録し、ひとりひとりの犠牲を忘れない。 2部、4部もいつか読みたい。 ワジディ・ムアワッド、今日本語で読めるのはあと1冊。 読むまで死ねない…
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