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イスラム技術の歴史 の商品レビュー

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3件のお客様レビュー

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2022/03/16

旅で重宝するオリーブ石鹸、以前中東に旅に出かけていた時から愛用するようになった。 池袋の古代オリエント博物館でパルミラ遺跡の大きなジオラマを見て、内戦で荒廃し様変わりしてしまったであろうシリアに想いを寄せた。そして、書籍『イスラム技術の歴史』から世界中で多くイスラム起源の技術が活...

旅で重宝するオリーブ石鹸、以前中東に旅に出かけていた時から愛用するようになった。 池袋の古代オリエント博物館でパルミラ遺跡の大きなジオラマを見て、内戦で荒廃し様変わりしてしまったであろうシリアに想いを寄せた。そして、書籍『イスラム技術の歴史』から世界中で多くイスラム起源の技術が活かされており、シリアのアレッポの名産となっている石鹸もイスラムの技術の1つであることを知った。また、古代オリエント博物館 企画展「ヨルダン川の彼方の考古学 —ヨルダン考古学最新事情—」からヨルダンを3度にわたって訪れたことも振り返ってみた。 ● 洗顔にも洗濯にも使える便利な旅行用石鹸、オリーブ石鹸 ● 『イスラム技術の歴史』アフマド・Y・アルハサン,ドナルド・R・ヒル 著からイスラムの高度な化学技術を知る ● シリア パルミラ遺跡(Palmyra)の思い出 ● シリアの首都 ダマスカス(Damascus)の活気 ● 古代オリエント博物館でパルミラの遺跡に再会する ● 古代オリエント博物館 企画展の「ヨルダン川の彼方の考古学 —ヨルダン考古学最新事情—」 オリーブ石鹸の歴史は、イスラムの知恵と技術から生まれた。書籍『イスラム技術の歴史』 アフマド・Y・アルハサン,ドナルド・R・ヒル 著の化学技術の章に詳しく記載がされている。 この本は面白い内容が満載であり、西洋起源と思いがちな技術の数々が、実はイスラム圏の発見や発明に基づくものだと気がつかされる。例えば「船舶と航海術」の章ではイスラム技術に特化した造船技術やラティーノ(三角帆)について特長含めてしっかり触れておりイスラム目線なのが新鮮に感じる。また、火薬を含めて軍事技術が極めて発達し、十字軍を打ち負かし続けたイスラム故にこれら化学技術には優れたものが多い。 蒸留器を「アランビック」と言うが、この言葉も蒸留技術もイスラム起源で、この技術が原油の精製につながり先の軍事技術の発展に大きく寄与しているし、香水精製という世界初の産業をも生み出したりもしている。 石鹸の製造に必要な「アルカリ」もアラビア語であり、「アルカリ」はシリアのアシュナーン、ウシュナーン、シナーン等と呼ばれる灌木の灰からとられたものを指す。固形石鹸の作り方は、この「アルカリ」と石灰を煮詰めて水酸化ナトリウムを作ることから始まる。そして、この水酸化ナトリウムを、火にかけたオリーブオイルに幾度も段階を分けて注ぎ、固形化していくことによって硬石鹸が完成する。 詳細はコチラから↓ https://jtaniguchi.com/%e4%b8%87%e8%83%bd%e3%83%9e%e3%83%ab%e3%82%bb%e3%82%a4%e3%83%a6%e7%9f%b3%e9%b9%b8/

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2021/10/12

本書は,ユネスコの会議をきっかけに,技術進歩に対するアラブ・イスラム文明の貢献を扱う総論である。それまでイスラム科学に含まれてこなかった分野に関しても詳しい。訳は大東文化大学のプロジェクトのもとで行われ,1999年に出版。

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2014/04/19

1992年に英語で著され、1999年に邦訳が刊行された、イスラム技術の入門書である。 入門書としてはいささかいかつい印象も受けるが、読み始めると図版も多く、外見より読みやすい。何より興味深い。 イスラム技術に関しては、この本の前には総合的著作はなかったという。 本書はユネスコの...

1992年に英語で著され、1999年に邦訳が刊行された、イスラム技術の入門書である。 入門書としてはいささかいかつい印象も受けるが、読み始めると図版も多く、外見より読みやすい。何より興味深い。 イスラム技術に関しては、この本の前には総合的著作はなかったという。 本書はユネスコの会議がきっかけとなり、ヒジュラ暦(イスラム暦)15世紀を記念して、著者らに委嘱されたものである。 類書がない中で、アラビア語の原典にあたるなどした労作である。 イスラムで科学技術が発展した大きな理由は、広い地域が宗教的に統一され、文化的に一体となり、また共通の言語が使用されるようになったことである。 平和が保たれる中、技術者・科学者間の交流が盛んになされ、互いに切磋琢磨することになった。 本書で紹介されるイスラムの技術は多岐に渡る。ざっと目次を見てみる。 序章 第二章 機械工学 第三章 建築と土木技術 第四章 軍事技術 第五章 船舶と航海術 第六章 化学技術 第七章 織物、紙、皮革 第八章 農業と食糧技術 第九章 採鉱と冶金 第十章 技術者と職人 第十一章 エピローグ 中で印象深いのは、揚水に関わる技術と、錬金術から派生した技術、冶金である。 灌漑は農業には不可欠な技術である。そのための揚水装置には歯車が巧みに組み合わされ、効率的な作業を可能にした。 歯車はまた、天体観測機器(アストロラーブ)や日時計にも用いられ、原理から応用へ、また応用から別の応用へと広がりを見せたことを容易に想像させる。 錬金術が、現在の見方で「化学」かと言われれば胸を張って応とは言いにくいだろうが、かつて化学の発展において、相当な役割を果たしたことは疑いない。蒸留や抽出、昇華といった化学的手技はイスラム錬金術の熱心な研究から生まれ、洗練されていった。石鹸が生まれたのはアラブであるし、精油(香水や香油)もイスラム世界で発祥したと見られている。 興味を引きつけられるのは、同じような原理が多様な分野に応用されていることである。歯車しかり、抽出しかり。おそらくは科学者・技術者同士の交流の賜なのだろう。 イスラム科学技術は11世紀に停滞したというのが主流の説であるらしい。しかし、本書によれば、いささかは発展の速度が鈍ったかもしれないが、その技術は進歩し続け、16~17世紀まで続いていたという。 イスラム技術について、広く知られているとは言えないのは、アラビア語の原典を検討する必要があるためであり、こうした障害のために、ヨーロッパとの比較研究も十分であるとは言えないようだ。 片鱗を伺うだに魅力的な一連の技術は、さらなる敬意と注目に値するように思われる。 *イスラムの砂糖や冶金の話はもうちょっと追ってみたい気もしています。砂糖の発展や普及にもイスラムが大きな役割を果たしたのですねぇ(『砂糖のイスラーム生活史』と『砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書)』は余裕ができたら読んでみたいなぁ)。ダマスクス剣は高炭素鋼とのこと。模様(フィリンド)が美しいです。 **参考文献 ・『図説 科学で読むイスラム文化』 ・『イスラム芸術の幾何学 (アルケミスト双書)』

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