野球と戦争 の商品レビュー
戦時期・戦後初期の野球が受けた苦難の歴史ドキュメント。野球を戦時体制の確立にとって有害な「敵性競技」とみなして敵視する教育行政や軍部による圧迫と統制、それに対する野球人の抵抗と「自主規制」の動態が明らかにされている。今日では考えられないほど、野球に対する偏見や非科学的批判が渦巻...
戦時期・戦後初期の野球が受けた苦難の歴史ドキュメント。野球を戦時体制の確立にとって有害な「敵性競技」とみなして敵視する教育行政や軍部による圧迫と統制、それに対する野球人の抵抗と「自主規制」の動態が明らかにされている。今日では考えられないほど、野球に対する偏見や非科学的批判が渦巻いていたことに驚かされると同時に、これまた今日とは比較にならない「気骨」「反骨」がいたる場面で現れるのに感心する。膨大な資料と独自の取材が元になっているが、はっきりしないことや、より精緻な検証が必要な個所も少なくないように見受けた。戦前は(旧制)中学野球・大学野球の比重が圧倒的に大きかったので仕方ない面もあるが、学生野球に比べ、実業団やプロ野球と戦時体制とのかかわりが十分に見えてこないのは残念。また戦前の植民地(特に台湾と朝鮮)があまり視野に入っていないのも問題であろう。
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山室寛之『野球と戦争 日本野球受難小史』中公新書、読了。スポーツと戦争ほど対極するものはないが、国家意識が動員されると親和性は強くなる。しかし戦中日本は野球を「敵国スポーツ」ゆえに弾圧。本書は団結力や精神力が称揚された野球が如何に追い込まれていくか丹念な取材で明らかにする。 著者は新聞記者を経て読売巨人軍球団代表。豊富な人脈と取材で、当時の野球環境の悲劇と「それでも野球がしたい」と白球にかけるプレイヤーの思いを丁寧に描いている。「このスポーツは不健全」と認定する恣意性には驚くし野球だけではない。 私自身はスポーツには全く興味がない。たまたま手に取った本だったけれども、知られざる歴史を掘り起こしていくという意味で面白い一冊。今を翻ると、プロ野球で「正力賞」というのが、歴史をスルーしてそのまま栄誉として流通している。ここにはその対極の立場があり違和感を感じるのは事実。
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[ 内容 ] 大リーグでの日本人選手の活躍、WBCでの連続優勝…。 日本の野球は世界の頂点を極めつつあるように見える。 ただ、その歴史に暗黒の時代が刻まれていることを知る人は少ない。 昭和七年、学業軽視、選手獲得に金銭が動くことを懸念した文部省は「野球統制令」を公布。 さらに、泥沼化する戦況のもと、野球部排撃の動きが全国に広がった。 粛正、弾圧を潜り抜け、物資窮乏の中、焦土の上に復活する苦難の日々を史料と証言で辿る。 [ 目次 ] 1 浄化(野球新時代へ―昭和二年;沸騰する人気と統制令―昭和四‐七年 ほか) 2 弾圧(野球部解散―昭和一五‐一六年;甲子園大会中止―昭和一六年夏 ほか) 3 消滅(文部省の戦時体育論―昭和一八年春‐夏;最愛の道具との別れ―昭和一八‐一九年 ほか) 4 復活(野球再開の動き―昭和二〇年八月;新興野球部の奇跡と偶然―昭和二一年四月 ほか) [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
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