SF傑作短篇集 月世界2008年 の商品レビュー
30篇の短編小説が収録されています。 長さだけを見れば、「ショートショート」とも言えます。 しかし、裏表紙の内容案内では 「現実に起こりうる話をSFタッチで巧みに描いた短篇を収録」 と書かれています。 昔、星新一のショートショート集の解説で、ショートショートの定義の一つと...
30篇の短編小説が収録されています。 長さだけを見れば、「ショートショート」とも言えます。 しかし、裏表紙の内容案内では 「現実に起こりうる話をSFタッチで巧みに描いた短篇を収録」 と書かれています。 昔、星新一のショートショート集の解説で、ショートショートの定義の一つとして、 「意外な結末」 が挙げられていたことを覚えています。 それを思うと、本作品集は、意外な結末があるのかと思って期待しながら読むと、肩透かしを食うような結末が多いです。 フランツ・カフカの『変身』で、どのような結末があるのかと思いながら読んでいると、何のことはなく淡々と終わってしまったような感じです。 そう考えると本作品集は、ショートショートというより、純文学の短編小説寄りなのでしょう。 純文学の作品は重苦しい作品が多いように思うのですが、本作品集は重苦しい作品も多く、やはり純文学寄りです。 巻末の5ページ足らずの森優(南山宏)さんの解説 着られなくなったジャケット 私なりのレクイエム が読み応えあります。 最後から2番目の、他の作品より少々長めの 『沈黙の夏』が現代の日本を予見しているようで興味深い。 東京は公害で汚染され、スモッグが発生して小学校で集団中毒が起こり、死者も出るような状態。 人々の肺は汚染物質で満たされ、首都圏の肺ガン患者は5年で2倍となった。 しかし政治的な圧力で箝口令が敷かれている。 主人公は、友人の医師から、空気のいい地方への疎開を勧められます。 「公害」を「放射能」に置き換えると、まさしく2015年現在の日本の現状そのものではないでしょうか。 皮肉なことに、著者の名前が受難的色彩を帯びています。 「福島の正しい真実」 という意味を思わせる悲しいペンネーム。これは偶然の一致なのでしょうか。 http://sfkid.seesaa.net/article/414769703.html
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