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ベティさんの庭 の商品レビュー

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2019/04/16

オーストラリアで海兵隊の旦那と2人の子供とともにくらす、元日本人のベティさん本名柚子は、時々やってくる貨物船に乗る少年を世話することになる。 うーん、なんていうか、なんだろう?なんにも引っかからない。 純文学や文学然としたところはなく、比喩もほとんどないため読みやすいのかもし...

オーストラリアで海兵隊の旦那と2人の子供とともにくらす、元日本人のベティさん本名柚子は、時々やってくる貨物船に乗る少年を世話することになる。 うーん、なんていうか、なんだろう?なんにも引っかからない。 純文学や文学然としたところはなく、比喩もほとんどないため読みやすいのかもしれないが、だからといって引き込まれるものでもない。オーストラリア妻という短編が2作含まれているのは、本人の私小説的要素があるのであろう。しかし、ただでさえ感情移入できない上に、なんだかわからない土地の描写で、どこに軸足をおいて読めば良いのかわからないのは辛すぎる。 あと2作のうち、水道工事のおじさんをいじめるだけの小説は、まあありかな。もう一作の心底わがままで嫌な身内にいやだいやだと言い続ける話も、なんかもう少し書き方があるだろう?と言いたくなる作品。 所々に、なぜ主人公はそう考えたのかという点において、ホホウと思うような表現があったりするわけだが、終始「〇〇した。〇〇した。〇〇した。」と紋切りで淡々と、悪く言えばダラダラと盛り上がりなく表現されているのは、ブンガク?ブンゲイ?何か勘違いしているようにしか思えない。 この手の(特に女性作家の)作品は、セックスに逃げ込むのであろうと思ったが、1作目でそこも自分で遮断しており、主人公も作者も読者も逃げ場のない、コンクリートの壁に囲まれた部屋のような作品群である。 芥川賞をとっているらしいが、1980年頃の芥川賞がつまらない作品ばかりになった頃の作品だと思う。

Posted byブクログ

2014/02/19

1972年下半期芥川賞受賞作。海外で暮らす日本人妻の物語。本篇はオーストラリアの、どうやらダーウィンが舞台のようだ。この小説のもっとも特徴的な点は、語り手を1人称にしないで、ベティさんと3人称に突き放して書いていること。このことは、小説の後段でアイデンティティ・クライシスが描かれ...

1972年下半期芥川賞受賞作。海外で暮らす日本人妻の物語。本篇はオーストラリアの、どうやらダーウィンが舞台のようだ。この小説のもっとも特徴的な点は、語り手を1人称にしないで、ベティさんと3人称に突き放して書いていること。このことは、小説の後段でアイデンティティ・クライシスが描かれ、全体の主題ともなっているので、十分に意識化された方法だったのだろう。渡豪してから20数年を経てなお、主人公はベティさんになりきれずに、かつて喪失した柚子(本名)としての自分を追い求める。乾燥した広大な僻遠の地での孤独は深い。  芥川賞の選考委員たちは、委員の交替はあるにも係らず、よほど海外で日本人妻として暮らす作家の書く物語が好きなようだ。管見でも第59回大庭みな子「三匹の蟹」、第68回山本道子「ベティさんの庭」、第94回米谷ふみ子「過越しの祭」と3つもあるのだから。

Posted byブクログ