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司政官 の商品レビュー

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3件のお客様レビュー

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2024/04/02

地球が植民地とした惑星をロボットとともに統治する「司政官」と呼ばれる官僚の話。 主人公や舞台の星が異なる4作からなる短編集で、人類と宇宙人の間で共存ができるか・伝統あるコミュニティの改革・先住民への畏怖・司政官自らのあり方への問いと様々なテーマが出てきた。

Posted byブクログ

2023/09/15

本書はハヤカワ文庫JA1500番到達記念復刊フェアとして出版された。リニューアルされたものかと思ったが、2021年10月15日 五刷だった(1975年9月30日発行)。てっきり初版を所有しているかと思ったが、書庫を確認したら欠番だった。そんな筈は・・・絶対に読んだ記憶がある。眉村...

本書はハヤカワ文庫JA1500番到達記念復刊フェアとして出版された。リニューアルされたものかと思ったが、2021年10月15日 五刷だった(1975年9月30日発行)。てっきり初版を所有しているかと思ったが、書庫を確認したら欠番だった。そんな筈は・・・絶対に読んだ記憶がある。眉村卓の「司政官」シリーズは息の長いものだが、中でもやはり長編の「消滅の光輪」が押しも押されもせぬ全盛期の金字塔であろう。第9回泉鏡花文学賞も受賞した。 司政官は、政治家と言うよりも高級官僚、いや名ばかりの高級官僚であろう。見方を変えれば中間管理職とも考えられる。それとも、会社の支店長と言った方が正しいか。いろいろ考えられるが、結局サラリーマン(ビジネスマンと言った方が良いのか?)的要素を多く抱えた内容はとても共感できる。日本SF第一世代、昭和の作品であるが、現在、読み返しても全く内容が古びていない、実に面白い、身につまされる題材でもある。 最近、新人SF作家の作品を沢山読む機会がある。その中で、上田早夕里の「華竜の宮」等の<魚舟>シリーズがとてもこの「司政官」シリーズに良く似ている。日本の外交官として海上民と陸上民との間で揺れ動く主人公の心理描写がデジャヴュの様に私に降り注いだ。華竜の宮は日本SF大賞の受賞作であり、審査員も少なからず眉村卓の再来と思ったに違いない。ノスタルジックにさせてくれる作品が今後も出続ける限り、自分なりの新人作品の発掘を改めて行うと心に決めた次第である。

Posted byブクログ

2022/07/16

遥かな未来、人類は太陽系外の居住可能な惑星に勢力を拡大し、植民地化を進めている。各惑星を治める「司政官」は、連邦経営機構の高度な訓練を受けて各地に送り出されるエリート官僚である。各惑星の気候・風土・文化を熟知し、現住生物との良好な関係を維持し啓蒙することに心血を注ぐ日々。そんな彼...

遥かな未来、人類は太陽系外の居住可能な惑星に勢力を拡大し、植民地化を進めている。各惑星を治める「司政官」は、連邦経営機構の高度な訓練を受けて各地に送り出されるエリート官僚である。各惑星の気候・風土・文化を熟知し、現住生物との良好な関係を維持し啓蒙することに心血を注ぐ日々。そんな彼らの目を通して描き出される各惑星の姿と行く末をリリカルに紡ぐ連作短編集。 詩情に満ちた、それと同時にたいへん重たい読後感の連作集です。 作品の古さゆえの舞台設定の違和感は、大いにあります。まず何よりも、ある程度文明が発達している惑星にわざわざ乗り込み、地球人の価値観に基づく「啓蒙」を進める発想が根底にあること。それから、登場する司政官が全員男性であること(最後のシーンで女性の「巡察官」が登場しますが、短絡的な思考で高圧的な物言いをする戯画的なキャラとして描かれています)。この辺の違和感は、それはもぅ突っ込みどころ満載ですが、いったん脇に置いて虚心坦懐に読み進めると、この作品はSFのフォーマットを借りた政治劇なのだな、ということがしみじみと実感できました。 惑星を統治する組織体制において、人間は基本的に司政官ただ一人であり、優秀で忠実な(しかし、心を通わすことはできない)ロボット官僚に囲まれてこれらを駆使しながら”政治”という困難な任務をミスなく遂行しなければならない、この孤独。たまに登場する地球人の植民者は、必ずしも司政官の味方ではなく、むしろ足を引っ張る側になることも多い。しかも、時代が進むにつれて、司政官制度自体が硬直化していき、互いに牽制しあったり巡察官の圧力を受けたりと、次第に追い詰められた立場になっていく・・・。 登場する司政官たち自身も、こうした状況を十分に自覚しており、そんな閉塞的な状況に置かれてもなお、自らの職責を正しく果たすべく、様々な困難に立ち向かっていきます。その大半は、悲劇的な結末に終わってしまう予感を孕みつつ、明確な結末を示さずに物語の幕が閉じます。 読み終えて本を閉じた時、ずっしりと背中に重たいものがのしかかってくる感触を覚えました。 善きことをなすために全力を尽くしつつも、何事も為せずに散ることを予感している、この虚無感。時代ゆえの古さはあるものの、この作品のエッセンスは、時代にかかわらず通読に耐えるものだと思います。この頃の日本SFならでは、ですね。

Posted byブクログ