常識的文学論 の商品レビュー
130526 中央図書館 スタンダールに傾倒していた仏文系知性派の作家・評論家、大岡による連載文芸評論が書籍化されたもの。50年前、日米安保改定の頃だ。1909年生まれの大岡も知命を越えた頃の年齢であり、自信が漲った筆である。 当時は、このような純文学方面の権威が、大衆小説や...
130526 中央図書館 スタンダールに傾倒していた仏文系知性派の作家・評論家、大岡による連載文芸評論が書籍化されたもの。50年前、日米安保改定の頃だ。1909年生まれの大岡も知命を越えた頃の年齢であり、自信が漲った筆である。 当時は、このような純文学方面の権威が、大衆小説や推理小説を「批判」する文芸評論があったということが、21世紀の今日からみると「ずいぶん昔のことだな」と感じさせる。純文学という言葉が既に死語であろうし。 井上靖の『蒼き狼』を、歴史的表現の見てくれの下に、作者のご都合モチーフで史実を改竄する通俗小説であると痛烈に批判し、深沢七郎の『風流夢譚』、松本清張の一連の作品を、大岡自身は楽しく読んでいたのかもしれないが、少なくとも文学とは認めない。しかし、今やこういう文芸評論自体が出版社の商品として成立することは無いだろう。
Posted by
- 1