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脳力を手で伸ばす の商品レビュー

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2015/07/30

 「手」と脳との関係は身体論や生理学などの分野でよく論じられる。実感としても「手」の複雑な動きはサルから進化した人間の特徴であるといえ、その成果である文化や科学の発展は「手」を使うことなくしてはありえない。だからと言って考えながら手を使っているうちはまだ「身についていない」という...

 「手」と脳との関係は身体論や生理学などの分野でよく論じられる。実感としても「手」の複雑な動きはサルから進化した人間の特徴であるといえ、その成果である文化や科学の発展は「手」を使うことなくしてはありえない。だからと言って考えながら手を使っているうちはまだ「身についていない」という段階であり、考えることなく手が動く、というレベルまで達して初めて「手を使う」ことの実感がでてくるように思う。  本書は脳生理学の専門家による「手」を使った脳訓練メソッド。どの方法も実践的かつ説得的。どれか一つでも癖にしておくだけで一生モノの財産になるのではないだろうか。ただ、人によっては、というよりもほとんどの人は「手」を使ってなにかしらの営みを普段から行っているものだろう。デスクワークでもペンを走らせることや、キーボードを打つこと、料理や食器洗い、楽器を演奏するなどなど。博学な方々からの意見では「ゲームは頭が悪くなる」ということがよく言われるが、ディスプレイによる目への影響はともかく、「手を使う」という視点から観ればゲームパッドの複雑な操作は上記の動作とそれほど変わるものではない。特に対戦格闘系のゲームはそれなりの訓練をしなければ楽しむことはできないはずである。ひとそれぞれの経験によって物事の評価が変わるのは当然であるが、少しでも接点を発見した分野には少しでも関わって体験してみたほうが良いのではないかと思う。  どうしても「脳トレ」チックな話題では老化云々に話が流れてしまうが、むしろ問題はそれほど年齢を重ねていない人たちの指先の不器用さなのではないかと思う。これは「面倒なことはやらない」という現代文明の副作用が作用していると考える。手の使い方はもちろん、足の衰え、内蔵の衰え、ひいては脳の衰え…。若いうちからの習慣が年齢を重ねていくうちに顕在化する。これは人間の「老化」というよりも「怠慢化」に起因する現象ではないか。そうした社会的な考察はともかく、本書は脳の専門家からの神経系の説明が詳しい。これはこれでとても有益ではあるが、やはりこうしたメソッド本は実践するに限る。

Posted byブクログ