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アラスカ戦線 の商品レビュー

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2017/01/15
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※このレビューにはネタバレを含みます

なんか戦記物っぽいでしょ。 ページをめくると細かい文字がぎっしりでしょ。 アラスカ戦線なんて聞いたことがないでしょ。 全然期待しないで読んだら、これすごく面白かった。 第2次大戦中のアラスカを舞台に、日本軍とアメリカ軍がそれぞれの作戦を全うするために死力を尽くすのですが、そんな建前というかお膳立ては150ページまで。 残りはとにかくアラスカという極めて過酷で広大な自然の中でどうやって生き延び、敵を追いつめ、前に進んでいくかの話。 あくまでフィクションなんです。 日本側の主人公日高大尉は、武士の家系に生まれた軍人。武士と軍人のメンタルの違いも小説で生かされているから、この設定は実に秀逸。 十種競技でオリンピックの銀メダルを貰えるほどの身体能力を持ち、自然の中で生活することを好み、異国で現地の人たちの心を掌握することにたけている。 つまりこの任務を遂行するには最適の人物。 対するアメリカ側の主人公アラン・マックルイアは、アメリカの自然保護局に勤める役人。本来ならさっさと出世してアラスカのような辺鄙な場所にいるはずのない学歴の持主なのに、デスクワークよりも現場が好きで、アラスカの自然を熟知している山歩きのプロ。 このふたりの視点で交互に語られるようになってからが俄然面白い。 日本軍の作戦を阻止しようと追うアランたちは、どんな些細な痕跡も見逃さない。 ほら、このほんのちょっと湿った石が、こすれた木肌が、日本軍が通ったと彼らに教えている。 次の章では、追ってくるアメリカ軍を察知しながら、次々と罠を仕掛けていく日本軍。 さらに次の章では罠を回避して追いつめるアメリカ軍。 視点が変わるたびに情勢もひっくり返る。 作者はドイツ人なのね。 だからどちらかに肩入れすることなく、公正中立に闘いは続いていく。 欧米人の苦手な日本文化についても、日本に住んでいたこともあってかなり正確。 最初の頃は日本人が書いた本だと勘違いしていました、私。 自然の描写、知識も、作者が実際アラスカ6ヶ月暮らしてみただけあって、目の前に迫ってくるほどのリアリティ。 ずっとわくわくドキドキしながら読めますが、最後の50ページの緊迫感たるや。 ついに1対1で追いつ追われつする日高大尉とアラン。 闘いの中で互いに敬意を持ち、卑怯なふるまいをすることなく正々堂々と振舞う二人。 どんでんどんでんどんでん返し。 結末については賛否両論あるかもしれません。 でも、読後感の爽やかなこと。 血まみれ汗まみれ、泥臭い男2人の闘いの果てが驚天動地&脱力で、読後爽やか。 フィクションの楽しさを存分に堪能させていただきました。

Posted byブクログ