ドン松五郎の生活 の商品レビュー
井上ひさし没後10年の節目に、この一冊を選んでみました。人間性について色色物議を醸す人ですが、まあここではスルー致します。傑作は常に聖人から生れる訳ではないし、寧ろその逆の場合も多いですから。敢へて例を挙げませんが。 ドン松五郎は飼主から捨てられ、母犬とも生き別れとなつてし...
井上ひさし没後10年の節目に、この一冊を選んでみました。人間性について色色物議を醸す人ですが、まあここではスルー致します。傑作は常に聖人から生れる訳ではないし、寧ろその逆の場合も多いですから。敢へて例を挙げませんが。 ドン松五郎は飼主から捨てられ、母犬とも生き別れとなつてしまひます。運よく小説家松沢先生の娘、和子くんに拾はれて松沢家の飼犬となりました。松沢先生はそこそこの知名度を持つ作家のやうですが生活は裕福とは言へず、庶民的な人。遅筆故に仕事は捗らず、量産も出来ぬため、原稿料がウハウハとはいかぬやうです。ドン松五郎によると、実にくだらない理由で原稿が進まないさうです。例へば一人称を「わたし」にするか「わたくし」にするかで悩みまくる。これは作者の井上ひさし氏そのものではないでせうか。 ドン松五郎は優秀な雑種犬で、人間の言葉を解し、文字も読め、学問もあります。小説家先生の家には書物がふんだんにあり、勉強の材料には事欠かない。大学へ出かけては校舎の外で講義を聞くといふ離れ技をやつてのけるのです。 ここでドン松五郎は様様な仲間と出会ひます。平吉やゴンさん、キングなど一芸に秀でた犬たちが集まり、人間顔負けの論議を繰り広げるのでした。『吾輩は猫である』では苦沙弥先生の家で迷亭や寒月君たちがやることを、ここでは犬がやる訳です。 元警察犬のキングはドン松五郎を、「選ばれた犬」として認めてゐます。何でも、肩にある牡丹型の斑点が「聖痕」なのださうな。 彼らの持論は「人間は愚かな動物である」。しかし犬はその人間に依存しなければ生きていけないのも事実。そこから導かれる真理が、「おれたち犬の幸不幸は飼主の幸不幸に左右される」即ち「おれたち犬が仕合せになるにはまず人間が仕合せにならなくてはならぬ」。ドン松五郎たちの行動基準はそこから出発したのでした...... 漱石の『猫』同様、否それ以上に人間界への風刺が満載であります。いや、批判と言つた方が良いか。更に言へばここでは「人間」とはほゞ日本人を指してゐます。ドン松五郎の口を借りて井上ひさし氏の持論が展開されてゐるのです。少々くどく、牽強付会的な面もあるやうに思ひます。特に現代の日本人が読めばきつと「パヨクの戯言」といふ事になるでせう。 しかし作者は常に権力の暴走に目を光らせ、流されやすい我我日本人に警鐘を鳴らしてきました。権力者が恣に世の中を動かし、更に監視すべき筈の国民が唯々諾々とそれに従ふ構図。益益彼らは民を舐め、馬鹿にすることでせう。 まあ本来はこんな事は言はず物語を純粋に愉しめば良いのですがね。アハハと笑ひながらも、つい考へてしまつたのであります。デハデハ。
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「吾輩は猫である」の犬versionといえる小説。犬のドン松五郎が繰り広げる様々な出来事が非常に面白いです。 彼の人間批判や「人間が幸せにならなければ、犬も幸せになれない」というテーゼは非常に素晴らしいと思います。 犬でありつつ非常に弁がたって、彼の論理は辛口といえども、物事の本質を突いている。 井上さんの思考がそのままドン松五郎の考えに反映されていると思います。 我が家の愛犬も彼のように色々考えていると想像すると楽しいです。
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「吾輩は猫である」の主人公を犬にし、やや時代を現代にしたパロディー版的小説。犬好きにとってはたまらなく面白い小説。 主人公の雑種犬ドン松五郎の目線から見た、人間の行動や社会に対するユニークな風刺が展開される。本小説では、犬は実際は人間と同じ程度の知性をもっているのだが、それを隠...
「吾輩は猫である」の主人公を犬にし、やや時代を現代にしたパロディー版的小説。犬好きにとってはたまらなく面白い小説。 主人公の雑種犬ドン松五郎の目線から見た、人間の行動や社会に対するユニークな風刺が展開される。本小説では、犬は実際は人間と同じ程度の知性をもっているのだが、それを隠してうまく人間を利用することで自分たちの平穏を保っているという設定なのだが、これが秀逸すぎる。 うちのまるこも本当は全てのことを理解していて、その上で色々なことを企んでいるのだろうか?などというくだらないことを一瞬考えてしまった。うーむ。
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我輩は犬である な小説。 イッパイアッテナ的なものを期待して読んだような覚えがある。 古い人の古い本だから仕方ないけれど価値観が古い親父くさくて好きになれなかった。
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ドン松五郎たち犬の奇想天外な冒険物語。 井上ひさしならではのことば遊びの面白さ。 強烈な社会風刺を楽しく読ませてくれている。
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