昭和史の深層 の商品レビュー
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「昭和史を語り継ぐ会」を主宰するという著者は、その収集した膨大な資料.記録を「昭和史講座」に集約しようと壮大な計画を試みている。本書は副題に「15の争点から読み解く」とあるように、太平洋戦争、東京裁判、南京事件、慰安婦問題、強制連行、沖縄戦、昭和天皇etc.‥各章表題を掲げ、客観的に史実を整理しつつ問題の本質を絞り込んでいく。 -20100630
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人類は毒ガスと原子爆弾の製造、開発によって戦時下における大量虐殺を可能にした。これはいずれも非戦闘員をも含めて大量虐殺を意味するのだが、これに加えて都市じゅうたん爆撃もある。戦争の形態が国家総力戦になったからで20世紀の戦争は国家のあらゆるシステムが戦争に向けて友好な昨日をもつよ...
人類は毒ガスと原子爆弾の製造、開発によって戦時下における大量虐殺を可能にした。これはいずれも非戦闘員をも含めて大量虐殺を意味するのだが、これに加えて都市じゅうたん爆撃もある。戦争の形態が国家総力戦になったからで20世紀の戦争は国家のあらゆるシステムが戦争に向けて友好な昨日をもつように変えていかねばならなかったから。化学兵器の残酷さは戦争という合法的な殺人によってその威力が確かめられた。 人類大量殺りく兵器(毒ガスと原子爆弾)を抱え込んだ人類社会は逆にいえばそれを使う論理や情念とそれを阻止する論理や情念とを衝突させながら辛うじてバランスを保ちつつ21世紀を生きているということになる。
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著者は「解釈や分析は二義的なものであり、史実そのものを正確に押さえる事が重要」としているが、著者のインタビュー(オーラルヒストリー)ベースによる「評論」は実証史学とは異なるテイスト感があり、史実そのものとは言い難く、著者の主観的解釈が内在している事に留意すべきだろう。 ジャーナリ...
著者は「解釈や分析は二義的なものであり、史実そのものを正確に押さえる事が重要」としているが、著者のインタビュー(オーラルヒストリー)ベースによる「評論」は実証史学とは異なるテイスト感があり、史実そのものとは言い難く、著者の主観的解釈が内在している事に留意すべきだろう。 ジャーナリスト歴史学はアカデミズム歴史学とは異なる価値はあるとは思っているので、各々の分野で歴史探究していけばよいのかと。
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『昭和史入門』(文春新書)の姉妹編とも言うべき内容。昭和史をめぐる諸問題(あるいは昭和史に端を発する問題)に対し、現代を生きる我々の取るべき道を示していく。どの章も、冷徹な事実の積み上げによって形成されており、新聞やネットに溢れる小手先の「あった」「無かった」の水掛け論とは一線を...
『昭和史入門』(文春新書)の姉妹編とも言うべき内容。昭和史をめぐる諸問題(あるいは昭和史に端を発する問題)に対し、現代を生きる我々の取るべき道を示していく。どの章も、冷徹な事実の積み上げによって形成されており、新聞やネットに溢れる小手先の「あった」「無かった」の水掛け論とは一線を画している。ぜひ「ネットde真実」してしまった人たちに読んで、頭を冷やしていただきたい一冊。
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本書は昭和史の15の歴史的事実を扱った歴史書である。ひとつひとつが大きな課題であり、優に1冊の本となるような事案ばかりであるので、それぞれの事案の詳細は本書のみではわかりにくいところもあるが、昭和史全体を理解するためには良い本であると思った。 日本人は歴史好きの人が多いと思う...
本書は昭和史の15の歴史的事実を扱った歴史書である。ひとつひとつが大きな課題であり、優に1冊の本となるような事案ばかりであるので、それぞれの事案の詳細は本書のみではわかりにくいところもあるが、昭和史全体を理解するためには良い本であると思った。 日本人は歴史好きの人が多いと思う。幕末の坂本竜馬は日本史最大のヒーローであるし、明治を扱った「坂の上の雲」も人気は高い。ところが、昭和期の歴史は、人気がない。私には、昭和の歴史についての国民全体の共通の認識が今成立しているとは思えない。 日本人は、どこかで間違ったから、あの戦争になったのだろう。本書によると昭和史論争でのさまざまな意見を持つ人たちにひとつの了解点があったそうである。それは、「なんとおろかな戦争を戦ったことか」という了解点であったそうだ。 戦後65年を過ぎて、ようやくあの戦争を冷静に語れる時代が来たのかもしれないと思う。本書は、最近の研究も取り入れて新しい見解も語っている。昭和史の認識を深められる本であると思う。 本書で感じたことをいくつかを取り上げてみたい。 ひとつには「対中国観の歪み」である。日本の政治・軍事指導者、さらには日本の国民が、中国の歴史や風土、中国人の気質、国民的エネルギーについて無知であったことが、中国侵略につながったとしている。これは、現在でも当てはまるのではないか。 「太平洋戦争とその歴史的本質」では、近代日本が行きついた結果の自滅行為ではないかといっている。この時代の日本人の共通認識が成立するためには、さらに成熟した論議が必要なのだろうと思った。 「北方4島、北海道占領をめぐるドラマ」では、スターリンとトルーマンの息づまるやり取りを記載している。国際政治の非情さと残酷さを感じた。日本は、あやうく東西ドイツの悲劇と同じ局面になりかねなかったのだ。他にも本書には興味深い事実が多く記されており、おもしろく読めた。 それにしても日本の記録文書についての認識には怒りさえ覚える。1945年8月14日の閣議で戦争関係の文書を全て焼却するように、行政機構、軍事機構の末端にまで命令を発している。当時の指導者には、文書が国民全体の歴史的財産であるとの認識がなかったのだろうか。あきれ果てる愚挙だ。 日本の昭和期の歴史がこの1冊で全てわかるわけではないが、より深く昭和史を知るためには必須の1冊といえるかもしれないと思った。
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[ 内容 ] 昭和三十年代の「昭和史論争」を初め、これまで、昭和史をめぐっては様々な論争が繰り広げられてきた。 今日でも、国を超えた歴史共同研究が進む一方、個別のテーマに関して、依然として対立点が存在する。 これまでの論争は果たして本質的なものであっただろうか? 15のテーマに関...
[ 内容 ] 昭和三十年代の「昭和史論争」を初め、これまで、昭和史をめぐっては様々な論争が繰り広げられてきた。 今日でも、国を超えた歴史共同研究が進む一方、個別のテーマに関して、依然として対立点が存在する。 これまでの論争は果たして本質的なものであっただろうか? 15のテーマに関して、史実を整理し、より本質的な問題点を提示する。 [ 目次 ] 満州事変前後の国家改造運動 二・二六事件と新統制派 日中戦争と「現地解決・不拡大」 南京事件―戦場における残虐行為とは 太平洋戦争とその歴史的本質 毒ガス・原爆・大量殺りく兵器を許した論理 北方四島、北海道占領をめぐるドラマ 「敗戦」と向き合うということ 東京裁判が真に問うていること 占領期に見る宰相の資質 占領は解放か。それとっも抑圧か 強制連行の実態を考える 沖縄県の本質を見つめる 慰安婦問題に見る「戦場と性」 昭和天皇の歴史的役割を分析する [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
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半藤一利とならび昭和史研究の第一人者の筆者が昭和史の15のテーマを資料と証言をもとに書き下ろした本。 天皇、軍部、占領軍ではなく国民の視点から様々な論の是非を問うている。 5章の「太平洋戦争の歴史的本質」で第二次大戦に参戦した当時の指導者がもし、宣戦布告の際、日本の参戦の意義を「アジアアフリカの欧米諸国からの解放」と主張していたら後世の評価は違っていった。 11章の昭和天皇が昭和21年の年頭の詔勅に「五箇条のご誓文」を記したのは、民主主義は大戦後米国によってもたらされたのではなく、維新後明治天皇が民主主義を神に誓われた時からである、など興味深い。
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