鉄道でゆく東海絶景の旅 の商品レビュー

内藤昌康【著】

2012/10/18

東海地方限定版なので、あまり馴染みはありませんが、場所を絞っているため、紹介される絶景の数々は初めて知るところばかり。
著者が東海出身者なので、解説もこと細かく、地元の人に教えてもらっているような気分になります。
駅から2キロ内、徒歩30圏内の場所を選んでいるという点に、読者が実際に訪れやすいようにとの配慮が見えます。

沼津の千本松原は、昔より有名だったところを、戦国時代に武田勝頼が北条氏政と戦った折、相手兵が隠れないよう松を伐採して一旦消滅してしまったのだそう。
松林が消えて潮風が防げなくなったため、苦しむ農民たちを見かねた、諸国巡業中の僧侶が松の苗を植えていき、数年後にようやく復活したそうです。
さらに若山牧水が静養中にこの松林を気に入り、永住を決めて居を構え、県の伐採計画が上がった際にも先頭に立って反対したとのこと。
時代ごとに人々に守られてきたという松林を、いつか見てみたいと思いました。
諸国を巡り、さまざまな美しい景色を見てきた歌人の牧水がそこまで気に入った場所だということに、心惹かれます。

浜名湖の弁天島にある弁天島駅や、大井川線接阻湖（せっそこ）の上にある奥大井湖上駅など、かなりの絶景が楽しめるよう。
寸又峡や蓬莱橋も紹介されており、静岡は見所が多い県だなあと思います。

愛知では、名古屋から30分の渓谷、定光寺駅が気になりました。
旧線トンネルを年に二度、開放しているそうです。　

岐阜では、今渡ダムと並行にかけられた鉄橋のある美濃川合駅がおもしろそうでした。
駅から望む絶景だけでなく、上に上って景観を楽しむための、町の高層ビルも紹介されています。

近くならば、気軽に電車に乗って身にいけそうな場所ばかり。
ほかの地域版も出ていればいいのにと思います。
その土地に詳しい別の著者が出している本がないか、探してみようと思いました。