絆と権力 の商品レビュー
絆と権力―ガルシア=マルケスとカストロ (和書)2010年08月09日 16:00 アンヘル エステバン, ステファニー パニチェリ 新潮社 2010年4月 読み応えのある作品でした。 カストロ と ガルシア=マルケス の それそれを媒体とした諸関係性が見事に捉え描かれてい...
絆と権力―ガルシア=マルケスとカストロ (和書)2010年08月09日 16:00 アンヘル エステバン, ステファニー パニチェリ 新潮社 2010年4月 読み応えのある作品でした。 カストロ と ガルシア=マルケス の それそれを媒体とした諸関係性が見事に捉え描かれていると感じる。その諸関係とは文学であったり政治であったり、その役割を含む諸関係なのだろうと思う。 柄谷行人さんの書評で紹介されていました。 良かった。 asahi.comで書評を読んだ上で読むのも面白いと思う。
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ノンフィクションというより研究書に近いと感じるから、文章が いささか硬いのは仕方ないと思う。 しかし、原書(スペイン語?)からの翻訳なのか、英語版からの 翻訳なのか不明だが、訳文がどうしようもなく読みずらい。直訳 しちゃったのかなぁ。もう少し文章の流れを考えて日本語訳に...
ノンフィクションというより研究書に近いと感じるから、文章が いささか硬いのは仕方ないと思う。 しかし、原書(スペイン語?)からの翻訳なのか、英語版からの 翻訳なのか不明だが、訳文がどうしようもなく読みずらい。直訳 しちゃったのかなぁ。もう少し文章の流れを考えて日本語訳に してくれればよかったのに。 興味深いテーマではあるのだ。ノーベル賞受賞作家のガルシア= マルケスと、キューバ革命の立役者でありキューバの指導者で あるフィデル・カストロの間に結ばれた友情を、関係者への インタビューや多くの文献を基礎にして辿っている。 それだけに日本語訳が読ませる訳になっていないのが残念だ。 原書の著者ふたりはカストロのキューバにかなり批判的。 そうだろうなとは思うのよ。アメリカの傀儡政権を倒した とは言え、カストロだって他の独裁者たち同様に思想・ 言論統制を行ったのだもの。 そのカストロによる思想・言論統制を擁護したのがマルケス。 マルケスの中には幼い頃に祖父母から聞かされ続けた軍事指導者 への憧憬がずっとあったのだと思う。 その憧憬を反映させた人物がカストロだったのかもしれない。 もし、文学者になっていなければマルケスは南米の政治に関わり、 カストロとの友情を築く以前に命を落としていた可能性もあるので はないのかなぁ。 『百年の孤独』をはじめ、マルケスの作品はいくつか読んだが、 彼の政治大好きぶりを知って作品を読み直すと読後感も変わる かもしれない。 カストロについてはかなり否定的な内容の本書ではあるが、 マルケスがノーベル賞授与式に出席した時に、キューバ産の ラム酒1,500本をスウェーデンに送ったエピソードは楽しかった。
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ガルシア=マルケスとフィデル・カストロ。コロンビア出身のノーベル賞作家とキューバの最高指導者。それぞれの分野でラテンアメリカを代表する二人だが、この二人の間に特別な関係があることを、恥ずかしながらこの本を読むまで知らなかった。 言われてみれば、『族長の秋』をはじめとして、マルケスの作品に権力者を主人公にしたものは少なくない。独裁的権力を奮う軍事的指導者の姿を、頭には「マジック」と着くもののあそこまでリアルに描くには、身近にそのモデルになるような人物がいないと考える方が難しいだろう。 しかし、今でこそ熱い友情で結ばれている二人だが、初めのころはそうではなかった。ガボ(友人の間でマルケスは、こう呼ばれている)が、キューバ革命支持を明らかにしてからも、カストロの方は距離を置いていたらしい。 その二人が、どのようにして近づいていったのか、その間にどのような事件があったのかを、かなり克明にレポートした内容となっている。筆者の立場は、独裁的権力者であるカストロに対して批判的であり、そのカストロに対して非常に近い立場にあるガボに対して距離を置いたものとなっている。しかし、単なる批判の書ではない。 ノーベル賞作家とキューバ指導者という立場をこえた二人の男の間にある友情に対しては、それなりの敬意を払っているようだ。ガボのノーベル賞受賞に際し、その祝賀会場にカストロから栓抜きつきのキューバ産ラム酒千五百本が送られてきた話には、つい口許がゆるんでしまった。 北欧はアルコール類には厳しい。十時をまわったら酒を提供することは禁じられているから、というカストロの口上が皮肉混じりで愉快である。これに対し、大量の酒類の不法輸送にスウェーデン蔵相はキューバ大使館に厳重抗議したというおまけまでついているのがまた笑わせるではないか。 カストロの秘密の外交官として各国の元首や大使とやりとりをするようになってからは、ガボはハバナの景勝地に豪邸をあてがわれ、キューバにいるときはそこによくカストロが深夜にひょっこり現れ、朝まで話しこんでいくという。権力者は気を許すときがない。そこでやっと孤独を癒すのだろう。 独裁政権の思想弾圧に対し、かつてキューバ革命を支持した作家たちも、次々とカストロ批判の側に立つようになり、ガボの周囲から文学者仲間が消えていく。それに替わって、ガボを取り巻くのは、元フランス大統領ミッテランやレジス・ドブレのような左翼政治家たちだ。クリントン元アメリカ大統領もガボと親しくしていたというから驚きである。 クリントンがハバナを訪れたときのこと。話が文学論議におよんだとき、元アメリカ大統領は、フォークナーが好きだと語り、『響きと怒り』の一節を暗誦してみせた。彼が退席した後、ガボとカストロがさっそく本を取り出して確かめてみたところ、たしかにほぼ同じ文章が書かれていたという。そのせいかどうかは知らないが、ガボのクリントンに対する評価は高い。 カストロとの友情も文学をぬきにしては語れない。あまり知られていないが、カストロはかなりの精読者らしく、ガボの小説の矛盾点を何度も指摘したという。それ以後、このノーベル文学賞作家は、カストロに目を通してもらってからでないと、原稿を出版社に送らないことにしたという。 たしかに、革命当初と比べればカストロ長期政権の評判はあまりかんばしいものではない。何人もの政治犯の釈放や国外脱出に手を貸すことで、ガボは自分の存在意義を証明しようとするが、それがカストロのアリバイになっているという指摘もある。キューバ島の外から見る限り、ガボの立ち位置は危ういものに見える。 ただ、キューバという国の持つ魅力には抗いがたいものがある。作家仲間からの集中砲火を浴びるノーベル賞作家にとって、今やこの国だけが唯一くつろげる場所である。権力者の孤独を一身に引き受ける軍事指導者にとっても世界に誇れるノーベル賞作家が常時傍らにいることは公私ともに喜ばしいことだろう。両者にとって、この晩年の友情はかけがえのないものなのだろう。さしものカストロも昨今はその健康状態が憂慮されている。弟のラウルがいるものの、この巨星が墜ちたとき、キューバは、そしてガボはどうなるのか。一読後そんなことを考えさせられた。族長の秋は足早に近づいているようだ。
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p.140 マニ教的二分法の極みは、キューバに存在する肯定的なことはすべてフィデルと革命のお陰であり、否定的なことはすべて経済封鎖のせいであるとすることだ。これと反対のことを言う者はいないだろう。それに私たちは、一弱小国家が強大な国々の帝国主義に懸命に抵抗していることは知っている...
p.140 マニ教的二分法の極みは、キューバに存在する肯定的なことはすべてフィデルと革命のお陰であり、否定的なことはすべて経済封鎖のせいであるとすることだ。これと反対のことを言う者はいないだろう。それに私たちは、一弱小国家が強大な国々の帝国主義に懸命に抵抗していることは知っている。だがそれでも、敵対する相手にすべての罪を被せるという単純で幼稚な立場を取る理由にはならない。
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