言語戦争と言語政策 の商品レビュー
カルヴェの古典、出版より20年を越えてやっと日本語訳が出版。アメリカのSIL(夏期言語協会)への批判なども含まれている。(あとがきによれば、このSIL批判の章は、英訳版出版の際に削除されたらしい。言語問題はどこまでも政治的なのだ。) カルヴェは言語の機能を二つのカテゴリーに分け...
カルヴェの古典、出版より20年を越えてやっと日本語訳が出版。アメリカのSIL(夏期言語協会)への批判なども含まれている。(あとがきによれば、このSIL批判の章は、英訳版出版の際に削除されたらしい。言語問題はどこまでも政治的なのだ。) カルヴェは言語の機能を二つのカテゴリーに分け、ひとつは群居機能、もうひとつは媒介機能であるという。(第5章) 媒介とは、コミュニケーションを最大限に拡大したいときに選ぶ言語形態であり、群居とはコミュニケーションを最小限の人数に制限し、自分の特異性を際立たせ、集団の境界線を明確にしたいときに選ぶ言語形態である。さらに、その群居的形態は、社会の中で階層分化の機能も併せ持っている。つまり、意識的に自分の群居言語を変えることで、社会階級が変わったかのようにふるまうことも可能なのだ。ここではプルデューのいう、「ディスタンクション」=自己を他者と区別して際立たせ、社会の中で各個人の行為を組織化する原理、が働いており(pp.113-114)、自分の意思で使う言語を使い分けることによって、どの階級に属しているように見えたいかを決定することができる。 事例は中国、アフリカ、南米の民族語まで多岐にわたる。書かれたのは今から20年以上前なので、ケーススタディに関しては今の現状とは大分かけ離れたものある。しかしカルヴェが指摘している言語と言語政策の政治性の問題は、これからも普遍的に存在するだろう。
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日本においては馴染みの薄い言語政策について、書かれた古典(今年の5月に出版された本だが、原著は1987年出版となっている!)。 非常に面白い本である。言語政策とは何か、言語計画とは何か、の定義から始まる。そして、個々の考察・留意点、構造を明らかにするとともに、それらの現実での...
日本においては馴染みの薄い言語政策について、書かれた古典(今年の5月に出版された本だが、原著は1987年出版となっている!)。 非常に面白い本である。言語政策とは何か、言語計画とは何か、の定義から始まる。そして、個々の考察・留意点、構造を明らかにするとともに、それらの現実での事例が書かれている。すなわち、この1冊で、言語政策についてのフレームワークを効率良く、かつしっかりと学べる点で面白い。 レポートのために読んだので、今度は夏休みにでも、ゆっくり読みたい。
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