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文字の大陸 汚穢の都 の商品レビュー

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2011/08/04

草森紳一の書いたものはすべて読んでいる、と断定することはできませんけれど、彼の書いた本はほとんど持っているか読んでいますし、しかもここ10年位のものは、それを時として雑誌掲載を見つけて読んでいると豪語してはばからない私ですが、さすがこの本の元となった大修館書店のPR誌「しにか」ま...

草森紳一の書いたものはすべて読んでいる、と断定することはできませんけれど、彼の書いた本はほとんど持っているか読んでいますし、しかもここ10年位のものは、それを時として雑誌掲載を見つけて読んでいると豪語してはばからない私ですが、さすがこの本の元となった大修館書店のPR誌「しにか」までは守備範囲外で、情けないことにその存在すら知りませんでした。 2008年3月20日に70歳で亡くなってもう3年ですが、没後に出た本が、『夢の展翅』青土社(2008/7)、『不許可写真』文藝春秋(2008/8)、『穴を掘る 老荘思想から世界を覗く』河出書房新社(2009/2)、『中国文化大革命の大宣伝 上・下』芸術新聞社(2009/5)、『フランク・ロイド・ライトの呪術空間 有機建築の魔法の謎』フィルムアート社(2009/7)、『本の読み方 墓場の書斎に閉じこもる』河出書房新社(2009/8)、『古人に学ぶ 中国名言集』河出書房新社(2010/2)、そして本書まで、なんと数えて8冊です。 3年間で8冊だなんて、実際に生きている物書きでもちょっとハイペース過ぎて、きっと過労死しそうですが、その創作の秘密は、彼の場合、長期にわたる連載がほとんどすべてにわたるスタイルだったからというものです。 かつて、何げなく手に取った雑誌をめくっていると、草森紳一の連載論考を発見して大喜び。それからは他の読みたくもない文章にはいっさい手をふれず、彼の頁だけを毎月読むために購読するということも平気でした。 ただし、ここで正直に白状してしまいますが、実は本来的には彼の書くものは私には難しすぎて、特に中国文学・思想にそれほど明るくないものですから、(なんたってほとんどの著作を読んで多少詳しいのは、魯迅と毛沢東だけというお粗末さです)彼の本を読むためには、関連して何冊もの参考文献も読まざるを得ないから、必然的に猛勉強の癖が知らない間に身につくので、怠惰な私にはもってこいなのです。 この本は、今から127年前の1884年=明治17年頃に、相次いで中国を訪れた政治家の尾崎行雄・原敬・榎本武揚・伊藤博文、漢学者の岡千仞という5人の第一線で活躍した人物たちが、実際に中国を見て何を思い何を感じたのか、いったい中国に対してどういうことを考えていたのかを、彼らが書き残したものを詳細に分析して読み解くという興味深い本です。 雑誌連載後改稿したり新しい原稿を加えたりとか、亡くなる直前まで推敲に余念がなかったらしですが、結局は決定稿にする前に急死されて、未完のままのかたちで刊行されることになったという残念な結果ですが。

Posted byブクログ