神狩り の商品レビュー
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善の象徴であるはずの神を「悪」と見なして、主人公たちが神と戦う姿を描くという発想の斬新さには感心するが、主人公たちは本当に神と戦っているのだろうか、いったい何と戦っているのだろうという疑問を強く持った。真偽不明の事柄を狂信している、ちょっと頭のいかれた人たちではないだろうか。 曰く、「古代文字を解読できた者は、世界を手中に収めることができる」「古代文字は神の世界のものである」「神はわれわれに悪意を持っている」「神の干渉があるかぎり、われわれが自由になれることもないし、真の意味での愛を手に入れることもない」「神さえ、その上にいなければ、人間はもっと善良にももっと幸福にもなれるんだ」等々。 主人公の島津は情報工学の専門家で言語学のエキスパートであることから、花崗岩石室に描かれた古代文字らしきものの調査に立ち会い、連鎖的に事件に巻き込まれ、「神狩り」に参加するようになる。諜報関係の人間、霊感能者といった非日常的な人物ばかりが登場し、怒涛の展開をみせる。 「神狩り」とはいうものの、神は登場しないし、神と戦う場面もない(芳村老人が霊能者ジャクスンの立会いのもとに面会したことになっているが)。 「神狩り」とは、「神の存在を証明して、その正体を人類の前に暴き立てること」らしい。神の実在を証明するために、古代文字の解読が続けられる。実際に「神狩り」と称してやっているのは、古代文字の解読だけであり、それを手に入れようとする諜報関係者や解読を阻止しようとする霊感能者との間のいざこざが物語の中心を占めている。 ラストでも古代文字の解読は終わっておらず、古代文字の解読を阻止しようとするジャクスンとの対決で終わっている。物語にはまだ続きがあることを予感させる終わり方である。
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将来を嘱望される優秀な若手言語学者・島津は、神戸の石室で人間の論理とは明らかに異なる論理に立脚する謎の「古代文字」を目撃し、強く惹かれる。しかし、その直後に石室は突如崩壊し、島津の前には「古代文字に近づくな」と警告する男の影が現れた。 九死に一生を得た島津が影の警告にも負けず古代...
将来を嘱望される優秀な若手言語学者・島津は、神戸の石室で人間の論理とは明らかに異なる論理に立脚する謎の「古代文字」を目撃し、強く惹かれる。しかし、その直後に石室は突如崩壊し、島津の前には「古代文字に近づくな」と警告する男の影が現れた。 九死に一生を得た島津が影の警告にも負けず古代文字の研究を進める中、どこからか彼の研究を嗅ぎ付けた訳知り顔の男が、島津に助力を申し出る。男の裏に見え隠れする、様々な裏世界の組織。危険な立場に追い込まれた島津を救ったのもまた、古代文字の秘密に迫ろうとしている者たち−宗教学者の吉村老人、アジア圏の裏世界に通じた宗、そして美しくも不安定な精神を抱えた霊感能者の美女・理亜。古代文字に対する彼らの意見は、島津が薄ら感じていた、しかし信じたくなかった結論と同じだった・・・古代文字は人間より論理レベルが上の存在、即ち「神」が人間に仕掛けた挑発である、と。「神」の正体を暴くため、無謀とも言える戦いに身を投じて行く島津たち。一人また一人と「神」の前に力つき、「神」に戦いを挑むこと自体が間違いではないか、と思い悩む島津。「神」を倒す足がかりは、果たしてあるのか?その先に見えるヴィジョンとは? 1974年作、山田正紀のデビュー作品です。 人間の論理学ではどうしても説明できない「古代文字」、主人公に警告を発する謎の影、暗躍する国際的な裏組織、神経症的な美しさを湛えた白皙の美女、100%コミュニケーション不能な強大なる敵「神」・・・とにかく派手で見栄えのする要素てんこ盛り!エンタテインメント性の強い外連味たっぷりの謎解き娯楽小説の体裁を取りつつも、「古代文字」の異質さを構築する言語学上のアクロバティックな理論や、全く異質な存在へのアクセスを試みるという知的好奇心をくすぐる展開が、正にSFの王道そのもの。全編に熱気溢れる、いかにも70年代の日本SFです。 一方で、良くも悪くも「若さ」が前面に出ているのか、若書きの至りの描写の浅さ、人物造形の単純さ、カッコよさを演出したいが余りの思い込みの強い文体が鼻に付くのも正直なところ。途中まで島津に興味を示していなかった理亜が後半いきなり島津の力になるあたりの展開も、男の願望全開のかなり御都合主義ヽ( ´ー`)ノすごくパワフルで魅力的な作品であることは間違いないので、ここにほんの少量の冷静さを加えたら、どんな大傑作になったんだろうと思います。 ラストシーンには賛否両論あると思いますが、この作品が書かれた時代の日本SF界の熱気に鑑みて、これぐらい荒っぽい方がしっくりくるんだろうなと鴨的には感じました。 うーん、もっと若いうちに読んでおけばよかったなー。
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かなり期待して読んだのだが。 ・語り手の人物設定。 ・語り手の大真面目な語り方。 ・登場人物たちのぺらぺらした行動。 ・≪古代文字≫の扱いの中途半端さ。 ・そもそも≪神≫の上滑り感。 ・≪神≫の実体に迫るのではなく、ただその「作用」しか見えない。 作用をあれこれ勝...
かなり期待して読んだのだが。 ・語り手の人物設定。 ・語り手の大真面目な語り方。 ・登場人物たちのぺらぺらした行動。 ・≪古代文字≫の扱いの中途半端さ。 ・そもそも≪神≫の上滑り感。 ・≪神≫の実体に迫るのではなく、ただその「作用」しか見えない。 作用をあれこれ勝手に解釈しているようにも。 ・つまりは、みんなのシリアスな顔が滑稽に見える。 ・結局は≪霊≫という概念に頼ってしまう。 ・時代の変遷を差し引いて考えても、古い。 ・学生運動世代にはぴんとくるのか? 押井守絶賛というし。 ああ。合わなかったということか。 一番苦手に感じたのは稚拙な文体。
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面白いんだけど、こんなもんかという感じ。偉大すぎて実感が湧かないとは多分このことだろう。恐らくエンターテイメントとしては画期的だったのかもしれないが、今の時代に読んでもその革新性はよく伝わらない。ていうか、ここで終わっていいのかよって感じ。「想像できないことを想像する」は至言。
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神の意志を探ると、人間のことを嫌っているように 思えるけど、実は人間の理屈で捉えるからであり、 そんなのは神本人が意識しているレベルとは 違う人間の解釈で、神自身はそんなこと 考えてもいない、というのは他のSFでも読んだが、 それでも神は近づくと邪魔するのね。 信仰の対象としての神がいるとか いないとかではなく、人間の論理で別の(上位の) 論理を持った存在とは相容れないことを超えようと 努力奮闘するイチ人類の話で、謎の国家的組織や 小さなレジスタンス組織が奮闘するあたりは面白いが、 霊能力者・超能力者が強く打ち出され始めると 急に興ざめ。いや話自体は面白いと思う。 神を狩るなんて、髪を刈るの悪いダジャレかと 思っていたが、全く関係なかった。
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SFを楽しむには、こちらにも教養が求められることを再確認させられた作品 言語学がとにかく難しい これをわかり易く解説した本はこれと同じだけの価値があると思う
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日本SFにおいて伝説的な著者のデビュー作。人間が神の文字を解読することによって神を狩り出すという設定は興味深い。但、実際読んでみるとかなり不満。何故なら神が人格神、情報科学と言語学の力を駆使し神の正体を探ると思いきや霊感応者や霊という超自然的存在がぞろぞろ出てくる。古代文字という...
日本SFにおいて伝説的な著者のデビュー作。人間が神の文字を解読することによって神を狩り出すという設定は興味深い。但、実際読んでみるとかなり不満。何故なら神が人格神、情報科学と言語学の力を駆使し神の正体を探ると思いきや霊感応者や霊という超自然的存在がぞろぞろ出てくる。古代文字というネーミングがダサ過ぎ。同じテーマで神は不可知神(高次元から漏れ出る重力もしくはダークマタ―的存在)にし最新の科学理論だけを使う。但、現代の技術水準は無視。つまり量子コンピューターなんか使い放題!こんな設定で誰か書いてくれないかな?
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★3.5かな? 前回読んだ「最後の敵」同様、まったく勝ち目のない敵に臨んでいくというSF。 こちらの方が、まとまっていた気はする。 しかし、(予想はしていたが)最後がちょいとだったなぁ。 ま、勝ち目のない敵と戦うわけだから、しょうが無いといえばしょうが無いのだが。
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絶対デビュー作だ、そう思った。すごく詰め込まれていて荒々しく挑戦的な小説。普通に読みやすかったから、まさか70年代に書かれてたなんて驚きやった。神がなんの暗喩か考えずに神は神として読むのがいい、って解説に書いてて、ちょっと笑った。
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まさにSF。とても好みな展開。なんだか小松左京、あるいは伊藤計劃をおもいだしながら読んだ。これが四十年近く前に書かれたとはね…すごいなあ
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