丸山眞男セレクション の商品レビュー
130907 中央図書館 有名な「超国家主義の論理と心理」だけしか、読む時間はなかった。終戦直後に書かれたものであるから、その先鋭な時代断面の気分が根本にあるには違いない。それでも日本では「自己証明する論理体系もなく、アプリオリに権威を受け入れる」というのが執拗低音であるという...
130907 中央図書館 有名な「超国家主義の論理と心理」だけしか、読む時間はなかった。終戦直後に書かれたものであるから、その先鋭な時代断面の気分が根本にあるには違いない。それでも日本では「自己証明する論理体系もなく、アプリオリに権威を受け入れる」というのが執拗低音であるということが、70年後の我々でも素直に納得できる。
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「超国家主義の論理と心理」を学生の頃に講義のテキストとして読んだことがあるので、思い出して再読した。 まず日本の超国家主義は欧米とことなり政教分離が未発達のため精神の動員が起きたという。そして権威や権力の高低差は、天皇からの距離に応じて同心円状に広がるという。そしてそのような仕組...
「超国家主義の論理と心理」を学生の頃に講義のテキストとして読んだことがあるので、思い出して再読した。 まず日本の超国家主義は欧米とことなり政教分離が未発達のため精神の動員が起きたという。そして権威や権力の高低差は、天皇からの距離に応じて同心円状に広がるという。そしてそのような仕組みが戦争に荷担したという。 今の私達は戦争が肯定された理由を当時の国際関係や国力比から説明しようとしがちだが、極端な精神論が語られた当時を生きた者にとって隣人があれほど戦争に対して肯定的であったのかこそがリアルな問題点だったのだろう。
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丸山眞男は世間では「左翼知識人」という位置づけなのだろうか?しかし彼はマルクス主義では全然ない。ただ、兵士として原爆投下の日に広島にいたらしく、平和主義を主張していることは確かだ。 周到で学問的な冷静さにあふれた丸山眞男の鋭い分析を、せめて昨今の頭の悪い右翼連中に論駁してもらいた...
丸山眞男は世間では「左翼知識人」という位置づけなのだろうか?しかし彼はマルクス主義では全然ない。ただ、兵士として原爆投下の日に広島にいたらしく、平和主義を主張していることは確かだ。 周到で学問的な冷静さにあふれた丸山眞男の鋭い分析を、せめて昨今の頭の悪い右翼連中に論駁してもらいたいものだ。 「政治的判断」の中では、「(戦後の)現状はケシカランから(戦前に近い形に戻そうと)改める」というのが現在の保守政党で、「何々を守ろう」と言っているのが革新政党である。という、パラドキシカルな状況を指摘している(377ページ)。 なるほど、日本で言われる「保守性」とは、現在ではなく過去の方向を向いているのに間違いない。 「「現実」主義の陥穽」には、講話論議、再軍備の問題に際し、いちばん頻繁に向けられる非難の言葉は「現実的でない」という言葉だ、と書かれている。 この言葉は、いままさに、原発を巡る推進/脱原発議論のなかでも繰り返されており、日本人の意識構造のキーワードなのだと思った。 丸山はここで言われる「現実性」を、(実際は多面的なはずの現実を)一面的にとらえたものであり、「既に与えられたもの=既成事実」としてとらえられたものだと指摘している。慧眼である。 「日々造られていくもの」としてのプラスティックな「現実」という側面に対する意識が、どうやら日本人には欠如しやすいらしい。 そのほか、福澤諭吉の相対主義的な考え方や、東京裁判での戦犯容疑者の証言から見えてくる、日本的官僚制度ふうの気質など、実に面白い、鋭い論評があふれている。 誰かにおすすめしたくなる本。
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