教育の社会学 の商品レビュー
本書は「教育社会学」の入門書だ。基本的な知識や用語の説明が載っているため、初学者にとっては役立つだろう。「子育て」について書かれた箇所を引用しておく。 <サラリーマン家庭が増え、子どもの教育が家族の中心的な仕事となったとき、親にとって子どもを育てることの意味は変わったといって...
本書は「教育社会学」の入門書だ。基本的な知識や用語の説明が載っているため、初学者にとっては役立つだろう。「子育て」について書かれた箇所を引用しておく。 <サラリーマン家庭が増え、子どもの教育が家族の中心的な仕事となったとき、親にとって子どもを育てることの意味は変わったといってもよい。労働力として期待されず、家業を継ぐ者でもない子どもを育てるということは、子どもは育てている間、親に楽しみを与えてくれる存在すなわち消費財になったことを意味する。いいかえると子育ては親に生きがいを与えてくれるものとなった。 子育てが親の生きがいとなったとき、子どもはよりよく育てられることが必要になる。なぜならば、子どもをうまく育てることによって親の満足も高まり、親の生き方それ自体が肯定されたような感覚が生まれるからである。この意味では、子どもは消費財になったというより、子どもをよりよく育てることが親の「名誉」となって返ってくるという意味で、「名誉財」になったと考えるべきかもしれない[山田, 1997]。>(108頁) 今日では、「子どものため」というよりも「自分(親)のため」の育児が成されているということだ。現代の親の多くは、子どもの人生を自分の人生と同化させ、子どもを「名誉財」として捉えている。「自立しない子どもが増えた」「現代の子どもは親離れができない」という指摘があるが、実際自立できていないのは子どもではなく親であり、親が「子離れ」できていない、という可能性は十分あり得る。この現象は現代の様々な問題と複雑に絡んでいると評者は考える。 今日の日本で最も危険な場所はどこか。答えは「家庭」である。日本での殺人事件の半数以上は身内同士によるものだ。この背景にあるのは、子どもに対する親の過度な期待ではないだろうか。熱心に子育てをすることは良いが、子どもの人生を私有化してはならない。 また、昨今の英語教育熱にも、この問題が絡んでいるのではないだろうか。子育てが過度になりすぎると、子どもを競争の道具にしてしまいかねない。子どもを「名誉財」としている限り、自分の子どもの優秀さが親の満足度を高めるからだ。筆者によると、近年のビジネス系の育児雑誌には、「他の子どもより一歩前に」「競争に勝てるように」「格差社会の勝ち組なるように」など、競争意識を煽るような宣伝が目立つ。企業側は競争主義の子育てニーズの高まりを巧みに利用し、親の感情を刺激しているのではないだろうか。
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苅谷先生筆頭著者ですから、 本郷で受けた比較教育社会学の入門的な講義と重複する内容です。 一度は聞いたことのある話ばかりですが、復習的に。 教科書として、非常によくできています。 ただその分固有名詞や人物名が多く出てくる一方で、それぞれの議論についてそこまで詳しく突っ込んだ内容...
苅谷先生筆頭著者ですから、 本郷で受けた比較教育社会学の入門的な講義と重複する内容です。 一度は聞いたことのある話ばかりですが、復習的に。 教科書として、非常によくできています。 ただその分固有名詞や人物名が多く出てくる一方で、それぞれの議論についてそこまで詳しく突っ込んだ内容は書かれません。(当然ですが) 授業の予習として読んでおいて、より詳しい解説(講義者自身からの問いかけ+見方の呈示)に当たっての前提とする、というのが本来の用途なんだろうと思われます。
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教育社会学入門書。partⅢ、Ⅳメリトクラシーがおもしろかった。 partⅠ 学校に行かない子ども、partⅡ 家庭教育と幼児教育の変化、partⅢジェンダーと教育の歴史(木村涼子)、partⅣ 「学歴社会」の変貌と「格差」(苅谷剛彦)
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