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パライゾの寺 の商品レビュー

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4件のお客様レビュー

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2021/05/23

土佐の訛りで語られる古老たちの半生。その土地ならではの風習や歴史に翻弄された彼らの物語は聞き手の心を揺さぶるものばかりだ。 連作短編集ともいえる本書の最終話では、それまで聞き手であった人物の思わぬ告白に背筋がぞくりとする。

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2019/12/24

宮本常一をモデルにした民俗学者が、土佐の田舎の人びとの語りを記録したという体裁で書かれた本です。 第1話は、土佐と大阪を行き交う船が風待ちのさいの定宿にしていた白波屋の嫁のよしが主人公。入港した船に向けて小用を足す「逆さまんなおし」をしてしまったため、生まれたばかりの子どもを置...

宮本常一をモデルにした民俗学者が、土佐の田舎の人びとの語りを記録したという体裁で書かれた本です。 第1話は、土佐と大阪を行き交う船が風待ちのさいの定宿にしていた白波屋の嫁のよしが主人公。入港した船に向けて小用を足す「逆さまんなおし」をしてしまったため、生まれたばかりの子どもを置いて離縁されてしまうことになります。第2話は、目の見えない昌作という男が主人公。姉崎川に足を踏み入れた彼が、みねとえいという二人の女性に卑猥な声をかけられ、家に連れていかれてしまいます。第3話は、明治のはじめ、キリシタンの信者を改宗させるため、彼らのもとに女郎のさくが送られる話。第4話は、自由民権運動の高揚を忘れられない貫之丞が、おなじく民権運動のころに芸妓として輝いていたまつという女に心を惹かれる話。第5話は、推理小説家をめざす淡中という男と、東京の貧民街で育ったフキ子の物語。第6話は、太平洋戦争中の話。息子の福寿が戦死し、「軍神」に仕立て上げられていくなか、母親の利根がいだいた疎外感をえがいています。第7話は、お遍路の旅人を接待する茶堂で、この土地の人びとの話を採集していた郷土研究家の語りに耳を傾ける話。 著者は「附記」で、次のように書いています。「この世に生きて死んでいった膨大な人々のほとんどは、英雄や権力の支配者として歴史に名を残すことのない者たちだ。しかし、名が残らなかったといって、その「声」が小さなものであるわけではない。むしろ力強く、逞しく、おかしく哀しく、多才な響きに彩られている。そんな庶民の声を、私も書き記してみたいと思ったのが、この短編集執筆の動機だった」。最後の第7話では、そうした無名の人びとの語ろうとする意志に、耳を傾けていた民俗学者自身が飲み込まれてしまうという結びになっています。

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2018/09/17

土佐の郷土の民俗説話に材をとったちょっとエロチックで不思議な感じのする7つのストーリー。やや滑稽であっけらかんと男女の交わりが出てくる1編目の「まんなおし」から、ページが重なっていくほどに悲哀の色が濃い話になっていくような。 どの話も遠い江戸時代の話というわけでなく、遠くて明治の...

土佐の郷土の民俗説話に材をとったちょっとエロチックで不思議な感じのする7つのストーリー。やや滑稽であっけらかんと男女の交わりが出てくる1編目の「まんなおし」から、ページが重なっていくほどに悲哀の色が濃い話になっていくような。 どの話も遠い江戸時代の話というわけでなく、遠くて明治の初め頃から戦前くらいまでが舞台になっている。近代でも土佐のはずれのほうではこんな日常だったのかという驚きも。

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2012/07/24

短編7作。 いい意味で裏切られた。 もがき苦しみ、這いつくばりながらも逞しく生ききる、「歴史に名を残すことのない者たち」。 現実に広がる怖さが淡々と語られる。

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