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内地雑居後之日本 他一篇 の商品レビュー

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2021/12/31

『日本の下層社会』で知られる横山源之助の著作。内地雑居とは1899年7月に外国人の居住・移動や営業の自由が認められたことを指す(治外法権の撤廃とバーター)。 というわけで、「内地雑居後の日本はどうなった?」が書かれているのかと思いきや、本書の刊行は内地雑居実施前の1899年3月...

『日本の下層社会』で知られる横山源之助の著作。内地雑居とは1899年7月に外国人の居住・移動や営業の自由が認められたことを指す(治外法権の撤廃とバーター)。 というわけで、「内地雑居後の日本はどうなった?」が書かれているのかと思いきや、本書の刊行は内地雑居実施前の1899年3月であった。「内地雑居後に営利に長けた欧米人の資本家が入ってくると、労働条件は一層酷くなるだろう」という見通しの下、当時の労働条件や労働運動について概説した上で、労働者に一層の奮起を促したのが本書の内容。つまり、「労働運動のすゝめ」である。なので、『日本の下層社会』では人力車夫のような雑業層やスラム街の記述が多かったのに対して、本書は工場労働者についての記述が多い。 同時収録されている「大阪工場めぐり」は新聞連載をまとめたもので、工場の様子がが具体的に描かれている点で、こちらの方がむしろ面白い。紡績など歴史の教科書に載っているような産業もあるが、マッチ、紙函、うちわ、洋傘、玉すだれなど、工場といっても多くの工程を手作業に依存しているものも目立つ。こういう小さな「工場」こそが、日本の産業革命の主役だったのかもしれない。

Posted byブクログ