思想地図(vol.5) の商品レビュー
北田暁大が編集を担当している本巻では、この「思想地図」がめざしてきた、社会科学をはじめとする現代の学問の諸成果を用いて現代社会のさまざまな問題にアプローチする「社会の批評」の有効性と意義に対して反省のまなざしを向け、あらためて「批評とはなにか」という問題に正面からこたえようとする...
北田暁大が編集を担当している本巻では、この「思想地図」がめざしてきた、社会科学をはじめとする現代の学問の諸成果を用いて現代社会のさまざまな問題にアプローチする「社会の批評」の有効性と意義に対して反省のまなざしを向け、あらためて「批評とはなにか」という問題に正面からこたえようとする諸論考が集められています。 橋爪大三郎、永井均の論文は、これまでの両者の主張にもとづく議論が多かったのですが、これらについては想定の範囲内だったので、がっかりすることもなく、おもしろく読めました。一方、稲葉振一郎の論文「キャラクターをめぐる「批評」「社会学」「社会科学」」は、小田切博の『キャラクターとは何か』(ちくま新書)の批評で、稲葉の議論はまったく正しいと思うものの、なぜ稲葉がいま小田切の著書を批判する必要があるのかということがわからず、すこし不満がのこりました。北田の設定した本巻の意欲的なテーマに稲葉がどのようにこたえるのかということに期待をしていただけに、残念に思います。 経済学者である小島寛之の論文「推論の限界―経済危機を相互推論モデルで読み解く」と、統計学者である星野伸明の「統計学で社会を捉える―数理構造と可能性」は、いずれも統計的な手法によって社会を捉えることにまつわる問題があつかわれています。小島の論文はこうした議論になじみのない読者にも理解できるようにくだいた説明がなされていて興味深く読んだのですが、星野の論文はまったく歯が立ちませんでした。北田の紹介に書かれているように「分析者の思考の実現こそが統計モデルである」という興味深い話があつかわれているのですが、勉強しなおして再チャレンジしたいと思っています。
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菅原 琢 (2010) 「アメリカ化」する日本の政治学――政権交代後の研究業界と若手研究者問題 pp. 381-405. この頃の日本の政治学の水準では統計データの分析によるCausal Inferenceの真の難しさがあまり理解されていなかったように思われる。本来は、単に回帰...
菅原 琢 (2010) 「アメリカ化」する日本の政治学――政権交代後の研究業界と若手研究者問題 pp. 381-405. この頃の日本の政治学の水準では統計データの分析によるCausal Inferenceの真の難しさがあまり理解されていなかったように思われる。本来は、単に回帰分析を行うだけではとても十分な研究にはなり得ず、媒介変数の影響をできる限り特定し、その上で説明変数と従属変数の間の因果効果を測定するという、従来の(naiveな?)計量分析よりもややこしい手順を踏まないと正しい分析として認められるべきではだろう。 そうした本来的な難しさがあることに加えて、計量分析研究が粗製乱造されやすい研究環境がある(とした場合)ということは政治学自体の信頼性に対する疑わしさを招くことに繋がるだろう。本論文では「亥年現象」に関する2つの研究において結論が全くの正反対になっているという例が挙げられている。不十分なモデルと不十分な計量分析に基づく研究からは進歩が生まれないのが政治学(社会科学)の難しさだ。政治学には基礎となるべきground theoryがない。Ground theoryのないなかで、マクロ的な政治現象の因果関係を解明しようとすれば、定性的にせよ定量的にせよ、現実のデータに基づいた議論を行わなければならない。基礎理論がない以上、データをよく説明できるような理論を作り上げる必要がある。計量分析はその点において、分析作業の手順が明確であるため、確かに正確な研究を行うのはややこしいとはいえ、社会科学の発展に寄与するはずだと思う。現実のデータをどのように扱えば、よい研究となり、政治学を正しい方向へ進めることができるのか、そのことが研究者に問われているといえる。
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ccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccc共同討議 闘いとしての政治/信念としての政治 / 野中広務, 姜尚中, 森達也, 北田暁大 述 特集・社会の批評 社会の批...
ccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccc共同討議 闘いとしての政治/信念としての政治 / 野中広務, 姜尚中, 森達也, 北田暁大 述 特集・社会の批評 社会の批評introduction / 北田暁大 著 社会への問い 思想の言葉と社会学の知 / 橋爪大三郎 著 「社会学」という不自由 / 長谷正人 著 馬鹿げたことは理にかなっている / 永井均 著 東京の政治学/社会学 / 橋本健二, 原武史, 北田暁大 述 社会の批評 サブカルチャー/社会学の非対称性と批評のゆくえ / 佐藤俊樹 著 キャラクターをめぐる「批評」「社会学」「社会科学」 / 稲葉振一郎 著 妄想の共同体 / 東園子 著 俺たちの空 / 瓜生吉則 著 文学/批評と社会学 / 遠藤知巳 著 社会の数理 推論の限界 / 小島寛之 著 統計学で社会を捉える / 星野伸明 著 「アメリカ化」する日本の政治学 / 菅原琢 著 著者:野中広務(1955-、南丹市、政治家)、姜尚中(Kang Sang-jung, 1950-、熊本市、政治学)、森達也(1956-、呉市、TVディレクター)、北田暁大(1971-、神奈川県、社会学)、橋爪大三郎(1948-、神奈川県、社会学)、長谷正人(1959-、千葉県、社会学)、永井均(1951-、東京、哲学)、橋本健二(1959-、石川県、社会学)、原武史(1962-、渋谷区、政治学)、佐藤俊樹(1963-、広島市安佐南区、社会学)、稲葉振一郎(1963-、東京都、経済学)、東園子(社会学)、瓜生吉則(社会学)、遠藤知巳(社会学)、小島寛之(1958-、東京都、経済学)、星野伸明(経済学)、菅原琢(1976-、東京都、政治学)
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北田 暁大さんの責任編集によるVol.5は王道路線なのですが、やや散漫で迫力に欠ける気がしました。 自分の関心が本書のテーマから別のところへ移りつつあるのかも知れません。
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北田さんの見方が変わった。全体を通して、これまでの「批評」に対する批判意識が通底されており、刺激的だった。 これを持って「思想地図」を一旦〆るというのは、挑戦的だったんだなあと思う。
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社会の数理(統計)のところが記憶に残った。 2つの話題があった。 ・進化ゲーム、協調ゲームとしての考察可能性 ・統計を通した考察可能性 統計で社会考察するとは、思考のモデル化であるということ。(現実のモデル化ではない) また、社会学における母集団の考え方では、有限母集団を拡張して...
社会の数理(統計)のところが記憶に残った。 2つの話題があった。 ・進化ゲーム、協調ゲームとしての考察可能性 ・統計を通した考察可能性 統計で社会考察するとは、思考のモデル化であるということ。(現実のモデル化ではない) また、社会学における母集団の考え方では、有限母集団を拡張して超母集団を考える。そこから層別抽出が正当化され、ベイズともつながるというところが目から鱗だった。
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思想地図5号の特集は「社会の批評」。北田暁大は今号で編集をおりるという。3号「アーキテクチャー」、4号「想像力」を編集してきた東浩紀の記事はない。3号と4号は刺激的だったが、今号は刺激が少ない。 ・社会学とサブカルチャー批評は相性がよい。サブカルチャー批評の場では、売れていない...
思想地図5号の特集は「社会の批評」。北田暁大は今号で編集をおりるという。3号「アーキテクチャー」、4号「想像力」を編集してきた東浩紀の記事はない。3号と4号は刺激的だったが、今号は刺激が少ない。 ・社会学とサブカルチャー批評は相性がよい。サブカルチャー批評の場では、売れていない作品がとりあげられるが、分析の道具として使われる社会学は、売れており、定評のある、学会では古いものばかりという指摘が面白かった。
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最初の野中さんのお話&対談と、続いての北田さんの論文がすごい。橋爪先生と永井先生の論文はいやいや書かされているのかな?という気もちょっとしてしまいました。でもどの論文も全体的におもしろかったです。間の東京論は地名とか風景とかがわかるともっと興味深く読めたと思うのですが…。
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今回の中では「東京の政治学/社会学」が読んでいて一番面白かった。 自分は東京に住んだことも言ったこともないので、23区内にある格差や西部沿線というフレーズもいまいちピンとこない。 でも、大阪にある香里団地などの例が出され、単に自分や自分の家の家計が貧しいとかではない、地域単位での...
今回の中では「東京の政治学/社会学」が読んでいて一番面白かった。 自分は東京に住んだことも言ったこともないので、23区内にある格差や西部沿線というフレーズもいまいちピンとこない。 でも、大阪にある香里団地などの例が出され、単に自分や自分の家の家計が貧しいとかではない、地域単位での生活環境の差について考えさせられた。
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「ちょうど数学の虚数のように仮構された神話的次元で、私たち国民はあらかじめ「憲法」を作り、それを政府に対して守らせていることになっているのだ。」(長谷正人 P133) 「悪はなんらかの偽でなければならないという通念は、根拠なき臆断にすぎない。」(永井均 P150)
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