イメージの運命 の商品レビュー
ジャック・ランシエールの新刊『イメージの運命』(平凡社)に漲っているのは、どこまでも途ぎれることなく持続する速度の体験、停滞し反復してはそのたびに速度を強めてゆく言葉の氾濫であり、読み手は、言葉がつくり出す袋小路のような湾岸に出航すべく、激しく促されるだろう。まるでドワイヨンの...
ジャック・ランシエールの新刊『イメージの運命』(平凡社)に漲っているのは、どこまでも途ぎれることなく持続する速度の体験、停滞し反復してはそのたびに速度を強めてゆく言葉の氾濫であり、読み手は、言葉がつくり出す袋小路のような湾岸に出航すべく、激しく促されるだろう。まるでドワイヨンの『ラ・ピラート』を見るかのような体験だ。その点では、ランシエール本人はドゥルーズ=ガタリの思想を否定しているにもかかわらず、その読書感は非常に似かよったところがある。 このところ邦訳刊行が続いているランシエールの本はどれも、示唆に富んだと言ったら聞こえはいいが、どうも気障ったらしいタイトルのものが多く、本屋で見るとつい苦笑してしまう。しかし、今回のタイトル『イメージの運命 Le destin des images』というのは、すこし野暮ったい。タイトルこそ野暮ったくはあるが、中身は鋭利である。弁証法的モンタージュと象徴的モンタージュの比較検討を中心議題としつつゴダールの『映画史』を論じてゆく第II章〈文章、イメージ、歴史〉あたりは必読の文である。 これに対して、マラルメの詩と、ドイツのインダストリアル・デザイナー、ペーター・ベーレンスが果たした役割の共通性を言い募る第IV章〈デザインの表面〉となると、読んでいてまったく肯けないままである。強靱かつ難解な論理の構築によって反論しにくく仕立ててはいるが、主張の内実は、ハイカルチャーに対するサブカルチャー擁護と同根だという気がする。
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