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大西祝「良心起原論」を読む の商品レビュー

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2020/08/03

明治時代の倫理学者であり、『道徳起原論』という先駆的な著作をのこしながらも若くして亡くなった大西祝の思想についての解説と、『道徳起原論』などのテクストを収録しています。 本書は二部構成となっており、まずは、カント倫理学を深いレヴェルでの理解を示しつつ道徳の起源について考察を展開...

明治時代の倫理学者であり、『道徳起原論』という先駆的な著作をのこしながらも若くして亡くなった大西祝の思想についての解説と、『道徳起原論』などのテクストを収録しています。 本書は二部構成となっており、まずは、カント倫理学を深いレヴェルでの理解を示しつつ道徳の起源について考察を展開し、さらに理性と感性を峻別するカントの問題を克服する展望を論じた大西の倫理思想について解説しています。同時に、教育基本法にかんする大西の批判についてもくわしく検討しています。 第二部では、大西の主著である『良心起原論』と、教育勅語批判にかかわる四つの論文を収録し、詳細なテクスト・クリティークの成果が示されています。大西の著作は、現在では『大西祝選集』全3巻(2013-2014年、岩波文庫)に収録されており、多くのひとにとって容易に触れることのできるものになっていますが、かつて刊行されていた『大西祝全集』では、『良心起原論』のテクストに編者の手が加わっていたとのことで、本書ではその異同が詳細に示されています。 わたくし自身は、本書の詳細な文献学的検証にはあまり関心がなかったのですが、大西の倫理思想そのものは興味深く読みました。

Posted byブクログ