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心の一燈 の商品レビュー

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2021/12/03

哲人政治家といわれた大平正芳を娘婿の森田一が回想した一冊。ブクログに登録したのはもう10年以上前だ。たぶん新聞の書評を見たのだと思う。森田が直接執筆している第一編は20ページ程度で、ボリューム的には森田へのインタビューによる第二編、第三編が中心になっている。 大平は吉田内閣の時...

哲人政治家といわれた大平正芳を娘婿の森田一が回想した一冊。ブクログに登録したのはもう10年以上前だ。たぶん新聞の書評を見たのだと思う。森田が直接執筆している第一編は20ページ程度で、ボリューム的には森田へのインタビューによる第二編、第三編が中心になっている。 大平は吉田内閣の時代、1952年の総選挙で初当選し、外相、通産相、蔵相などを歴任した後、1978年に第68代内閣総理大臣に就任した。しかしそのわずか一年半後、1980年の衆参同時選挙中に心筋梗塞で死去している。存命中は鈍牛とも言われ、どちらかというと地味な印象の政治家だったが、近年評価が高まっているようだ。 本書では日中国交回復や金大中事件、沖縄返還協定など、大平が外相として関わった歴史的案件や自民党内の熾烈な権力闘争の様子なども仔細に語られ、非常に興味深い内容になっている。三角大福中といわれた当時の実力者の姿も生々しく伝わってくる。もちろん大平の最側近だった森田の証言だけで大平他の政治家を評価することはできないが、この時代の政治を語る上で貴重な資料であることは間違いない。 印象的なのは、大平の政治や社会に対する認識が短期的、近視眼的なものではなく、もっと大きな、歴史的ともいえる観点で見ようとしていたという点。昨今の政局中心、いや政局しか眼中に無いような政治家とは大きく異なると感じる。 第二編、第三編の編者は三名だが、インタビュアーは13名が名を連ねていて、内容も多岐にわたっている。本書の全体像を理解するためには、先にあとがきを読むといいかも知れない。 次は『茜色の空』を再読する予定。

Posted byブクログ