性格とはなんだったのか の商品レビュー
「性格の一貫性論争」という性格心理学では有名な論争がありました。人間には性格があって,どこに行っても性格に適した行動をするよね(たとえば,明るい性格の人は基本的にどこでも明るい)と考えていた性格心理学者たちがいました。その人たちに対して,同じ人でもいろんな場面でいろんな振る舞...
「性格の一貫性論争」という性格心理学では有名な論争がありました。人間には性格があって,どこに行っても性格に適した行動をするよね(たとえば,明るい性格の人は基本的にどこでも明るい)と考えていた性格心理学者たちがいました。その人たちに対して,同じ人でもいろんな場面でいろんな振る舞い方をしてるよ,性格なんてないのでは?(たとえば,明るい性格の人は学校では明るく,塾では普通で,家では暗い)と批判した人たちがいました。このように,「性格はある」と考える陣営と,「性格なんてないのだ」あるいは「行動に一貫して影響する性格と呼ばれるようなものはないのだ」と考える陣営との間の論争を「性格の一貫性論争」と言います。 この「性格の一貫性論争」を整理,すなわち,性格心理学のこれまでを整理し直し,これからの性格心理学の方向性を提案したのが本書『性格とはなんだったのか』です。 「一貫性論争はある意味で疑似問題であった」と結論するものの(詳細はぜひ本書をご覧ください),そこから大事な教訓を取り出し,性格概念に対して4つのアプローチを引き出します(p.141)。 (1)行動主義アプローチ:性格概念の使用をやめ,人をとりまく状況要因の分析から行動の説明,予測や制御を目指す (2)理論的構成概念アプローチ:性格概念のうち,少数ではあるが存在する,理論的構成概念としての性質をもちうるものだけを使用して,行動の状況を超えた予測や原因論的な説明を目指す (3)相互作用論アプローチ:性格概念が傾性概念であることを前提にして,個人と状況との相互作用から性格をとらえることで,具体的な行動の予測力の増分を目指す (4)個性記述アプローチ:性格概念のメタファーとしての性質を重視し,個人の歴史や個人特有の文脈の分析を通じて,性格概念に内包された意味を明らかにすることを目指す 要するに,これまでの性格の用いられ方の多くはすでに機能不全であるから,新しい方向を目指して頑張ろうと主張しているわけです。しかし,実際にはそうなっていない現状があります。ちなみに,この4つの方向性は,性格概念だけでなく,社会心理学で用いられやすい心理学的概念にもあてはまる部分が多くあり,かなり示唆に富む内容になっています。 ところで,心理学は理論が弱いと言われます。本書に対して「心理学なんだからデータを取って示してほしい」(意訳)というコメントも見かけました。いかに心理学という学問が”理論”に疎く,データ偏重であるかを物語っているように感じます。そのような現状の中,理論的にアプローチし,理論的問題をクリアに明示し,今後の方向性を示した本書は稀有な存在であると言っても過言ではないと思います(しかも日本語で読める)。
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性格を近代学問のフレームワークの中で測定し分析してきた学史についての本です。 自然科学的な考え方において、ある性格がある行動を引き起こす(強い)傾向があると仮定して、ある人がその性格を持ち合わせていれば、その行動を引き起こすことが期待されます。この本では、その性格を「性格概念」...
性格を近代学問のフレームワークの中で測定し分析してきた学史についての本です。 自然科学的な考え方において、ある性格がある行動を引き起こす(強い)傾向があると仮定して、ある人がその性格を持ち合わせていれば、その行動を引き起こすことが期待されます。この本では、その性格を「性格概念」、その行動を「性格関連行動」と呼びます。 本の中心的な話題は、性格の「通状況的一貫性」の評価にあります。すなわち、「あの人は〇〇な性格だ」「私は〇〇な性格だ」と記述するとき、そこでは素朴に文脈的な要素が捨象されます。実際には、性格概念を直接観察する手法が(今のところ)ないため、性格関連行動から性格概念を規定せざるを得ないこと、学問的に調査をする際にインタビューにしろ調査票調査にしろ被調査者は調査されていることを意識して行動してしまうためそれが調査結果に影響されてしまう(二人称的視点)こと(もちろん自問自答する一人称的視点も同じく意識が調査結果に影響する)など、術語の定義を厳密にしていくと、「一貫性論争」自体が擬似問題であり、結局は性格は属人的な特性と外的刺激の組み合わせであると考えるのが現代では主流の理解となっています。また、属人的な特性には、遺伝し変わらない部分もあれば人生の中で変わる部分もあります。 とはいえ、こうした理解が心理学の中で進む一方、例えば就職時の性格適性検査は性格の(少なくとも職場内での)通状況的一貫性を仮定することを前提に成り立っていますし、より俗っぽいところでは、血液型性格診断のような類型論も受け入れられます。これは認知的フレームワークとして(ある程度の)通状況的一貫性のある性格を実運用的に見出されていることに起因すると考えられます。 このような学史を踏まえ、これまで進められてきた量的研究(統計学的手法)はこれからも発展していくと思われる一方で、質的研究(ナラティブ(発話)の分析、ライフストーリー研究など)から性格を記述分析する意義を著者は指摘しています。質的研究は、「パーソナリティ研究に『個人』や『時間の流れ』を取り戻す方法」であると著者は述べており、「個人」と「性格」の関係の探求がこれから進んでいくものと思われます。
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心理学というより心理学の哲学の本。抽象的な話ばかりでどうも。やっぱり心理学はちゃんとなんらかのデータ出してほしい。「性格」が我々の日常的な「性格」の認知の仕方を反映しているだけかもしれないってのはそうなんだろうけど、だからどうなのかってのが素人にはよくわからん。 2011....
心理学というより心理学の哲学の本。抽象的な話ばかりでどうも。やっぱり心理学はちゃんとなんらかのデータ出してほしい。「性格」が我々の日常的な「性格」の認知の仕方を反映しているだけかもしれないってのはそうなんだろうけど、だからどうなのかってのが素人にはよくわからん。 2011.8.6 再読。かなり偉いことがわかった。でもやっぱり専門家向き。
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