伊那路 の商品レビュー
(01) 近現代の文人たちが伊那路の飯田、伊那、駒ヶ根といった一帯の様々な風物を綴っており、それらの短めの文章が編まれている。 自伝的な書き物の一節としてこの地域が描かれることもあり、その著者は仮にこの地域に住まったのみで、後にこの地を離れた者たちも多く、その多くは故人として、既...
(01) 近現代の文人たちが伊那路の飯田、伊那、駒ヶ根といった一帯の様々な風物を綴っており、それらの短めの文章が編まれている。 自伝的な書き物の一節としてこの地域が描かれることもあり、その著者は仮にこの地域に住まったのみで、後にこの地を離れた者たちも多く、その多くは故人として、既にこの世を去ってもいる(*02)。故に、その文章には情感が生まれ、今はなき人の今はなき風景として立ち現れてもいる。それらは二度と戻れない地点でありながら、どこかこの先で出会うこともあるかのような既視感と未来的な観点も含まれている。 (02) 例えばドナルド・キーンなどは「信州ざざ虫紀行」などとして、この地域の特異な食文化を描いているが、決して好意的な取り上げ方とは言えない。が、多くの文人たちはこの伊那路の独特に魅せられているかに見える。それはまだ、彼女ら彼らが文をなしたのが若い時分であったからかもしれない。
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