インドの時代 の商品レビュー

榎泰邦(著者)

2010/10/05

著者は元インド大使であっただけに、近年のインドの状況を実に的確に捉えている。私はインドに在住しており了知している内容も多いが、経済的なことだけでなく、社会、政治、文化について網羅的に記述されておりインドについて知るには非常に良い書籍であると思う。
通常のインド本はBRICｓに関連した経済の話題とかインド哲学の話とか偏っている本が多いが、最近までインドに住んでいたということで比較的新しい情報が盛り込まれており、在インド日本国大使という目線から見たインドがどのように捉えられているかよくわかる。
特に最終章の「インドの核問題」においては、著者のインドにおける講演（個人的意見との言及あり）で日本の立場とインドの核実験に対する懸念がストレートに表明されており、日本人ならではの意見表明となっており傾聴に値する。インド人がこの内容を聞いてどの程度理解したのかが非常に興味深い。
また、インドと日本は仏教慣習を通して実は非常に多くの共通点があるのだが、普段日本人が意識しないで当たり前と思っているような文化的慣習も実はインドがその発端であるということが説明されており、多くの日本人がインドに対する認識を新たにすることであろう。

2010/07/29

インド大使の引退後の娯楽執筆かと思いきや、意外と真面目に書かれていて、歴史的背景を含めインドを概観する一助となった。