日本政治思想史 の商品レビュー
本書は古代中国の思想から説明を起こし、その天命思想がいかに徳川時代を内部から食い破ったのかを説明する。 個人的な感覚だが、近世の寺子屋のテキストといえば論語を含む古代中国の儒教書をイメージするが、中世には儒教的なイメージがあまりない。少なくとも儒者でビックネームは思い付かないし、...
本書は古代中国の思想から説明を起こし、その天命思想がいかに徳川時代を内部から食い破ったのかを説明する。 個人的な感覚だが、近世の寺子屋のテキストといえば論語を含む古代中国の儒教書をイメージするが、中世には儒教的なイメージがあまりない。少なくとも儒者でビックネームは思い付かないし、むしろ風林火山など孫子など兵法書の方が人気があったのかなと思う。 近世と中世では社会状況が異なるため、時代に求められる教育の質や程度が異なるのだろうが、江戸期になり羅山や仁斎をはじめとして儒学が隆盛したのは事実だ。このことは蘭学の導入や文明開化を待たずして既に積極的な海外文化の取り込み、海外文化の日本化が行われたことを意味するのだと思う。
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政治思想史というジャンルではあるがかなり多岐にわたる当時の文化経由での政治を紹介した本。 武士の思想や町人、官吏、商人などの思想を時代ごとに紹介し、さらには海外の文化思想、海外から見た日本、男女の文化などをさらりと紹介。 序盤のいわゆる武士について、脚色されたテレビなどの媒体経由...
政治思想史というジャンルではあるがかなり多岐にわたる当時の文化経由での政治を紹介した本。 武士の思想や町人、官吏、商人などの思想を時代ごとに紹介し、さらには海外の文化思想、海外から見た日本、男女の文化などをさらりと紹介。 序盤のいわゆる武士について、脚色されたテレビなどの媒体経由で表面的な彼らの文化ではなく、その実態と思想のようなものが紹介されている。これは読み応えがあった。 また性の意識などを始め、その性にまつわる封建社会の仕組みなどが読み取れ単純に面白かった。
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江戸時代の政治思想を概説。教科書に出てくる思想家の思想から、幕府の統治を正当化する、あるいは否定する政治思想まで。 面白いのは後者。どうして江戸時代は260年間も続いたのか。とりわけ、島原の乱以降大きな反乱もなく幕末の混乱期の前まで「天下泰平」が続いたのか。それを統治イデオロギー...
江戸時代の政治思想を概説。教科書に出てくる思想家の思想から、幕府の統治を正当化する、あるいは否定する政治思想まで。 面白いのは後者。どうして江戸時代は260年間も続いたのか。とりわけ、島原の乱以降大きな反乱もなく幕末の混乱期の前まで「天下泰平」が続いたのか。それを統治イデオロギーの点から考える。そして、そのイデオロギーに開国はどう影響を与えたのか。討幕のイデオロギーは佐幕のイデオロギーとどうつながっているのか。明治時代の文明開化は江戸時代にどのように準備されたか。 維新も文明開化も突然降ってきたものではない。近代に比べると退屈にも思われがちな江戸時代のダイナミズムを見直す、刺激的な一冊。
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おもしろい。 以降これを読まずに江戸も幕末も語れないだろう。 情報量が非常に多く、数多の価値観が均等に並べられているように見えて 実際は深く交錯しているように感じる。消化しきるのがとても大変。 今は全体の1/3くらいを一旦反芻している状態という感覚。
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法律を勉強しているのに政治に関して無知なのも問題と思い、手にとった。 江戸時代の武士の思想、国学者や儒学者の思想などを分析した本。 武士や儒学についてイメージとして抱いていたものが解説され、ものすごく納得できた。ただ、古文表記も多いので、意味が性格に捉えられていないかもしれない...
法律を勉強しているのに政治に関して無知なのも問題と思い、手にとった。 江戸時代の武士の思想、国学者や儒学者の思想などを分析した本。 武士や儒学についてイメージとして抱いていたものが解説され、ものすごく納得できた。ただ、古文表記も多いので、意味が性格に捉えられていないかもしれない。
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江戸時代を概観できる本はないかと尋ねたところ、複数の人から薦められた。著者は、丸山眞男門下の政治思想史研究者。細部の見解の正否を量る能力は僕にはないけれど、平易な文体で書かれた予備知識を必要としない、しかも重量級の政治思想の通史というだけで、なんとも貴重な意欲作。是非とも多くの人...
江戸時代を概観できる本はないかと尋ねたところ、複数の人から薦められた。著者は、丸山眞男門下の政治思想史研究者。細部の見解の正否を量る能力は僕にはないけれど、平易な文体で書かれた予備知識を必要としない、しかも重量級の政治思想の通史というだけで、なんとも貴重な意欲作。是非とも多くの人に読んでいただきたいけれど、人文科学の専門書に不慣れな人は通読できないのではないか。久々の僕も少々手子摺った。都市や風俗への具体的な興味については他を当たらなければならないけれど、それも参考文献リストから辿ることができるだろう。一方では浅薄短小、他方では細分化の風潮の中で、研究者が通史に取り組むことの意義は大きい。
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過去の政治にかかわる思想、―――体系的な思索だけではなく、漠然とした思いや感情を含む。そして人生観・倫理観のみならず、自然観・人間観・社会観等と連関している―――を探り、理解することは、今政治について原理的に考えるための刺戟と材料とを得る機会となる(p2) 本書は東大法学部...
過去の政治にかかわる思想、―――体系的な思索だけではなく、漠然とした思いや感情を含む。そして人生観・倫理観のみならず、自然観・人間観・社会観等と連関している―――を探り、理解することは、今政治について原理的に考えるための刺戟と材料とを得る機会となる(p2) 本書は東大法学部の「日本政治思想史」という講義で述べたことをまとめたものである。日本を動かしてきた政治的思想はいかなるものか、その概観を掴むことができる一般向けに書かれた良書である。
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江戸時代から明治初期にかけての日本の政治思想を幅広く取り上げています。武士や商人、農村の住民といった階層、江戸や上方、地方の出身者、江戸時代というさまざまな制約のあった時代に一生懸命考え、生きた人々の思想を縦横無尽に書いています。それにしても先に「制約」という言葉を使ってしまいま...
江戸時代から明治初期にかけての日本の政治思想を幅広く取り上げています。武士や商人、農村の住民といった階層、江戸や上方、地方の出身者、江戸時代というさまざまな制約のあった時代に一生懸命考え、生きた人々の思想を縦横無尽に書いています。それにしても先に「制約」という言葉を使ってしまいましたが、江戸時代イコール封建的で、閉鎖的で、停滞した社会というイメージはすでに過去のものになりそうですが、それにしても本書を読めば当時の人々の実に闊達で精力的、そして想像以上に自由であったということが感じられます。朱子学に飽きたらず、孔孟の原点に還ろうとした伊藤仁斎・東涯父子や荻生徂徠、朱子学者として儒学を政治に反映させることに尽くした新井白石、武士の世・聖人の世を批判し農民だけのユートピアを想像した安藤昌益、日本人独自の偽飾のない本来の心=「真心」こそ重要だとする本居宣長、重商主義の海保青陵その他さまざまな立場の人が狭義の「政治」だけでなく、イエや国家、百姓や武士、日本と西洋、男と女についてさまざまな意見を出しています。 その一端をかいま見れば、、荻生徂徠のように聖人にのみ政治をまかせ、その他は「反進歩、反市場経済、反民主主義そして反自由」とすることによって安定した社会が成立するという考えもいれば、先に書いた安藤昌益ように「聖人の作った法治の世界(法世)により暴力がはびこったと批判する人もいます。また海保青陵のように競争を重視し、武士も商売をためらわず(儒学では商売や卑しいものとされていた)藩専売などを主張する現実主義者?も江戸時代には確かに存在していました。 そしてこうした日本版「百家争鳴」「百花斉放」状態の中“西洋の衝撃”を受け、時代は近代へと突入し、明六社や福沢諭吉、中江兆民らの「文明開化」につながっていくのです。 それにしても、本書を読み進めていると、筆者は常に読者に問いかけます。私達は今の物差しで当時を測ってないだろうか、当時のこのような考えを私達は否定することができるだろうかetc・・・本書は極論すれば「人間とは何を考え、どのように生きるものなのか」江戸時代の思想を通じて現代の私達に思想させるような感覚になります。それは著者が最初に述べている「もっとも、実は、他のいかなる意義を持たずとも、歴史の探究は、それ自体、楽しいことである人にとって人ほど興味深いものは無い。多種多様な人が、不思議にもこの世に生を受け、そのつかの間の生涯において、思い、感じ、行ってきたこと―それらを知り、理解することは、これまで多くの人にとって深い歓びであった。これからもそうであろう。本書では、その歓びを分かち合うことをもめざしたい。」(4頁)というところから来ているものだと思います。そしてこの考えには心から共感します。人というのは興味深い、人文科学(もちろんこれに限らず)の出発点はまさにここにあるのではないでしょうか。 惜しむらくは、本書で随時引用されている各史料が非常に読みづらく難しいため、一般向けとはいいながら非常にハードルの高いということです(正直私もどこまで理解できたか自信がありません)。もう少し勉強をして、再読したいと思います。
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本書では,江戸時代から明治時代半ばにかけて,日本の政治思想がダイナミックに展開されていく様が,いきいきと描かれている。主役は,各1章を設けて解説される伊藤仁斎,新井白石,荻生徂徠,山形大弐,安藤昌益,本居宣長,海保青陵,福沢諭吉,中江兆民といった傑出した思想家だけではない。下級武...
本書では,江戸時代から明治時代半ばにかけて,日本の政治思想がダイナミックに展開されていく様が,いきいきと描かれている。主役は,各1章を設けて解説される伊藤仁斎,新井白石,荻生徂徠,山形大弐,安藤昌益,本居宣長,海保青陵,福沢諭吉,中江兆民といった傑出した思想家だけではない。下級武士,町人,百姓など普通の人々にも光が当てられている。彼らは,閉塞的な時代あるいは激動の時代にあって,それぞれの立場で,「人間はいかに生きるべきか」「社会(国家)はどうあるべきか」といった普遍的で深遠な問題と格闘していたのである。 著者は,この人々の思考が奇っ怪または幼稚に感じられるときは,まず自分の無知の無理解を反省すべきである旨述べ,現代人には見えにくい前提条件を視野に入れ,歴史的文脈の中で把握する必要性を強調する。そして,その前提条件である儒学,朱子学,徳川の政治体制について,いずれも1章を割いて丁寧に説明してくれる。また,当時の社会,風俗,文化,慣習などにもふんだんに言及してくれるので,非常にありがたい。これにより,遠い存在であった歴史上の人物が身近に感じられるとともに,彼らの思想の力強さに気づくことができ,畏敬の念を抱いた。
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ものすごく値の張る本だったが、なかなか面白い。 西洋の哲学はいろいろ読んだけど、日本の思想、というのは、イメージとしてそんなに系統だったものでないような気がして、知りたいとも思わなかったのだけど、武士、という、西洋でいう兵士と領主が一緒になった階級、というのは確かに珍しく、しかも...
ものすごく値の張る本だったが、なかなか面白い。 西洋の哲学はいろいろ読んだけど、日本の思想、というのは、イメージとしてそんなに系統だったものでないような気がして、知りたいとも思わなかったのだけど、武士、という、西洋でいう兵士と領主が一緒になった階級、というのは確かに珍しく、しかもその武士階級が支配した200年という期間が、日本で一番平和の持続した期間、という事実など、改めて説明されると非常に興味深い。 著者の説明は分かりやすいが、引用している当時の資料などは、解釈(現代語訳)どころか振り仮名もなく、意味がわからないものも多い。私よりレベルの高いインテリ向きの本なんだろうか??一般人でも面白い内容なので惜しいなあ。 じっくり読むことにする。
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