野口雨情 郷愁の詩とわが生涯の真実 の商品レビュー
作家の自伝を採録した日本図書センターのシリーズ。雨情はまとまった自伝はないので、雑誌や雨情全集などから短文を集めてある。「樺太東海岸の土人」(底本野口雨情第6巻所収)が興味深い。ギリヤーク族、オロッコ族の漁撈、テンやキツネの皮のロシア人との交易、冬の家屋は竪穴住居などという記述が...
作家の自伝を採録した日本図書センターのシリーズ。雨情はまとまった自伝はないので、雑誌や雨情全集などから短文を集めてある。「樺太東海岸の土人」(底本野口雨情第6巻所収)が興味深い。ギリヤーク族、オロッコ族の漁撈、テンやキツネの皮のロシア人との交易、冬の家屋は竪穴住居などという記述がおもしろい。本当にみたような記述なのだがそうなのか。 「石川啄木と小奴」の文も意味深長。 ”妻子がありながら、しかも相愛の妻がありながら、しかもその妻子まで忘れて、流れの女と恋をすることの出来たゆとりのある心こそ詩人の心であって” 石川の作品が熱情豊かなのもこういう恋する焔が心の底に燃えていたから・・とある。なるほど福島の芸者置屋に行った雨情の心情に結び付けてしまいたい文だ。 編者は子息の野口存彌氏。編者のことばにある最初の妻ヒロの記述には悪意を感じる。野口氏の母は雨情の再婚者つる氏なので父の前妻ヒロについてはあまりいい感情は抱けないかもね、という気になってしまう。 ヒロとの離婚が過去あまり資料がないため憶測で書かれてきたが、2005年、ヒロの実家高塩家に残された、雨情から高塩家宛ての書簡が実家所在地さくら市の文化財指定となり公開された。また雨情実家にあったヒロの箪笥が初めて開けられ2006年から2012年にかけ調査され目録化された。2005年にはさくら市ミュージアムから「書簡を通してみる野口雨情とヒロ」大嶽浩良著が出た。以上から雨情研究は2005年(H18)以前と以後に分けられる。この本は2010年出版、原稿がいつ書かれたがわからないが、2005年の新たな書簡公開や雨情実家の資料調査を雨情研究者の野口存彌氏は知っていたのか? この新資料発見による雨情とヒロの経緯が「若き日の野口雨情」として本になったのが2016.3.18 存彌氏は2015.12.5に84歳で亡くなってしまっているから、あらたな事実は知らなかったのだろう。 底本一覧 「野口雨情自伝」『現代詩人全集』第11巻S5..3.25新潮社 「定本野口雨情」第1巻S60.11.20未来社、第2巻S61.1.25、第6巻S61.9.25、補巻H8.5.15、(ほとんどかこの底本野口雨情から) 雑誌「成城」45号、T12.3、雑誌「眼」4号、S49.11眼の会、「いはらき新聞」M38.5.18、M38.11.19、「ハガキ文学」M40.2.日本葉書会、宮崎芳彦氏教示、野口存弥、本郷和子氏所蔵提供書簡、 2010.1.25 第1刷 図書館
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