なぜ女性はケア労働をするのか の商品レビュー
時代も変わってる、フェミニズムだってそこそこがんばったのに、性別役割分業が依然再生産されている、どうして?というのが基本的なこの本の問い。とくにケア労働(その多くが家事労働として私的領域のことにされる)は、職場に進出しても女性がやっぱやってる!もう無理な場合だってあるよ、というこ...
時代も変わってる、フェミニズムだってそこそこがんばったのに、性別役割分業が依然再生産されている、どうして?というのが基本的なこの本の問い。とくにケア労働(その多くが家事労働として私的領域のことにされる)は、職場に進出しても女性がやっぱやってる!もう無理な場合だってあるよ、ということで「社会化」が求められているけれども、なかなか問題が多い話だったりする。で、そういう議論が始まると、女性が自らそれを選んでるでしょ、という「主体選択論」と、そういう職にしかつけなかったり、働きに出ても賃金安いから育児や介護は自分でする以外の道がないでしょ、という「物質構造決定論」がバトルになったりするが、バトルじゃなくてそこを乗り越えましょう、とかそういうことがこの本では論じられる。性別役割分業の再生産の仕組みについては江原由美子『ジェンダー秩序』を批判的に読んでの説明がされているのだが、ジェンダー秩序の話が批判されているというより、ジェンダー秩序で批判されている項目がやっぱ批判されている、という印象。ジェンダーや性別役割分業に関する学説史が、この本で課題とされていることに即して二項対立的に配置されて説明され、学説史をさらうのにはいいなと思う。ただしそれぞれを自分で確認したほうがよさそう。どちらにしても、現場のことが含まれる領域での理論研究というのはいろんな意味で大変だと思った。2010年度S大E院ゼミテキストのひとつ。
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