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闇に消えた1100億円 の商品レビュー

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2015/12/17
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著者今西憲之はどうやらフリージヤーナリストのようである。 一昨年の9月、大阪高裁判決で、国の監督責任を認めさせ、一定部分といえ国賠訴訟に初の勝利をものした、被害者17000人余を数えた大和都市管財破綻事件における被害者救済の闘争記録である。帯に「原口一博総務相推薦!」と大書してあるのは、彼自身、この救済問題に当初から関心を寄せ、政府への請願や交渉に協力してきた、そんな経緯があってのことのようだ。 大阪・東京・名古屋の三都市で組織された被害者弁護団が合同して、管轄官庁たる財務省近畿財務局の監督責任を問い、国家賠償請求訴訟へと展開していったわけだが、その初期においては弁護団としても勝訴への確信はほとんど持ち得ていなかっただろうと、当時の報道などを見るにつけ私などにはそう思わざるを得ず、またしても火中の栗を拾った闘志の人櫛田弁護士も、今度ばかりは報いられえぬ苦労に終始するのではないかと、他人事ながら要らぬ心配をしながら関係報道に注目してきたものだ。 大和都市管財が破綻したのは平成13年4月、だがそれよりずっと以前、平成7年8月、近畿財務局は業務改善命令を出す筈であったにもかかわらず、どういう背景からかこれを撤回してしまっていたらしい。もうこの頃から危険視され、破綻も時間の問題とみられていたのだろう。それを6年も7年も生きながらえさせ、被害を甚大なものにしてしまったのはなぜか、近畿財務局や財務省に決定的な落ち度はなかったのか。 本書によれば、国側の責任を認めさせたこの判決をもたらす突破口となったのは、大勢の関係官僚の中からたった一人現れ出た参事官の、その勇気ある証言によるものだった、という。まさに救世主あらわるだが、このあたりの事情についてかなり詳しく書いてくれているのが、ルポルタージュとしてもたのしめる要素ではある。   ――2010/03/29

Posted byブクログ