逆に14歳 の商品レビュー
表題作『逆に14歳』は、どうなるかと思ったら、まさかの終わり方で残念だった。 表題作も『お買い物』も、高齢者が主人公で、高齢者同士のやりとりもあるところは、珍しくておもしろい。
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老境を迎えたかつての演出家・丸田と俳優・白田の2人の自ら感じている老醜ぶりが、面白おかしくその立場になって描かれています。若い日に丸田の恋人を含め3人で行った熱海に2人で行って、ロシア女のストリップを見る場面などは最高に面白いものです。そして後半の短編も、福島から新幹線で東京・渋谷に出ていく老夫婦と孫娘の日常生活を描いた戯曲「お買い物」も同じ可笑しさを表現しているように感じました。
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「逆に14歳」のほうは、身体がお爺さんで中身が14歳という不思議な世界の話だと思ったら「ア、そういうことだったのか。」だった。 前田氏ワールドによくある「あれ、何話していたんだっけ???」が、今回は更に多く出てくる。 「挿画:著者」と記載されていたが、辛酸なめ子さんが描いたのかと思った。英語のキャッチフレーズのようなものが付いていて、その内容が変だったが、本文を読んで「ア、そういうことだったのか。」と納得した。 「お買い物」のほうは、温かかった。 フィルムをねだったり、足の間に枕挟まないと怖い夢見るとか、おじいさんが可愛らしいかった。 この本読んだら、自然とお爺さん、お婆さんに目が行くようになった。 おしまい。
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『一番そういうのの進行を感じるのは意外と二の腕の内側である。ここがそうなってくるともうあれだ。つい10年前くらい前までは、この辺はけっこうあれだったが最近はもうあれな感じになってしまった。』 『昔はここに毛が生えていたなんて、今では信じられない。夢だったのじゃないか? 俺に毛が...
『一番そういうのの進行を感じるのは意外と二の腕の内側である。ここがそうなってくるともうあれだ。つい10年前くらい前までは、この辺はけっこうあれだったが最近はもうあれな感じになってしまった。』 『昔はここに毛が生えていたなんて、今では信じられない。夢だったのじゃないか? 俺に毛があった? まさか。こんなところに毛が生えるわけが無いよ。ツルツルスベスベだよ。ここが一番俺の身体の中でツルツルスベスベだよ。そういうのの進行を全く感じさせないよ。』 『ではなぜこんな裸の太った男が抱き合って肉と肉をすりつけあうような醜悪な出し物をわざわざ日本中に放映しているのか。そして俺のような老人がこんなものを、残り少ない命を使ってまで見ているのか。』 『側まで行って上手く転んだ振りして足にしがみ付いちゃおうか、俺上手くやれると思うんだ。上手く、やれると思うんだ。』 『ホント、毛が抜けたり、皮膚が死んだりするのになんで神経だけは元気なんだろうか。神経も少し死に始めてくれれば楽なのに。ついでに心も。神経と心だけは、全然死の気配を見せない。』 『なんで俺はこんなに相撲取りを気にかけるのだ? もしかすると、肉欲なのかも知れない。それは世に言う肉欲なんかよりももっと原初的な肉欲で、もう他人の肉だったらなんでも良いという本物の肉欲なのかも知れない。』 『20代の頃に買った革のカバンだ。俺の肌みたいにボロボロだけど、死んでるはずのこっちの革の方がまだ艶々だぜ。』 『俺は柔軟性を愛し続けてきたから、それが、頑固に柔軟性を求めすぎて、結局それって頑固なんじゃないか。ちっとも柔軟じゃなかったみたいだな』 『俺は手が震えた。基本震えているが、この震えは違う震えだった。』 『石油みたいなものだ。あふれるほどあったときは使いまくるのだ。しかし、それが限りある資源だとわかると今度はちょっとずつ使おうとする。しかし、いざもう無くなりそうになると、一体何に使えば良いのだ? この、時間と言うものは。何に使うのが無駄で、何に使うのが無駄ではないのか?』 『思えば俺の時間はほとんど無駄に使われた。まあ使ったのは俺だが、一日14時間寝てみたり、ずっと歩いてみたり、エロいことを何時間も考えたり。俺はトータルどれくらいの時間、エロいことを考えていたんだろうか?』 『そこに愛があれば全て許されるというような風潮を感じることも感じることもあったが、大きな罠であるよ。俺は老人だから言えるが、若い人は勘違いしがちだから気を付けて欲しい。愛があっても逮捕されることも普通にあるからね。』 『愛というものは空の箱で、そこにいつも何かを入れたがる。箱が空だとたまらなく寂しいように出来ているんだ。だから人はそこに何か出来るだけ良い物を入れたいと思う。何も入れるものが無くても、何でも良いから何か入れたいと思う。』 『愛が占領なら、恋は侵略で。恋が暴くことなら、愛はそれを見続けることで。』 『俺がした恋ってものは本当に恋だったのだろうか? そう信じてきたけど。多分違う気がする。俺は結局そんなもの一つもしていなかったのじゃないか。俺のあれはただの性欲だったのじゃないか。』 『いったい、愛と性欲は違うものなのか。性欲は愛を含んでいるのか。愛は性欲を含んでいるのか。それとも二つは完全に別のものなのか。』 『から揚げ』 『そんな脂っぽいもの食べて平気なの?』 『平気だよ、よく噛めば』 『何これ?』 『タルタルソース』 『あんまりタルタルしてねえな』 『そうだな』 『俺は、俺の、人間の、逞しさに、強さに、涙があふれた。』
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「逆に14歳」「お買い物」が読めます。 くすくす笑いながら読めます。むしろニヤニヤするほうが正しいかも。 あと、14年くらいは生きられるんじゃないかと思う二人の老人。 彼らは「14歳の童貞」みたいなもんじゃないかと、 逆から計算して思うわけですね。 老人の会話なのか、これがと...
「逆に14歳」「お買い物」が読めます。 くすくす笑いながら読めます。むしろニヤニヤするほうが正しいかも。 あと、14年くらいは生きられるんじゃないかと思う二人の老人。 彼らは「14歳の童貞」みたいなもんじゃないかと、 逆から計算して思うわけですね。 老人の会話なのか、これがと思うのですけど、 これがいいんですよ。 そのくせ、あれ、とか、これ、とか、 固有名詞を片っ端からないことにしていくおじいさんぽさがある笑。 自分が老いることは、本当に想像ができない。 それを、まざまざと認識した。 「お買い物」は前にNHKでドラマでやってたのを、 たまたまみていたので面白く読みました。
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『お買い物』はやっぱり傑作なんじゃないか?『逆に14歳』も好き。老人のことを書いていても、この作者のことばだけは同世代のものだと思える。
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若手劇作家の書く小説がこのところ人気で各文学賞にもよくノミネートされたり、受賞したりしている。この本の著者・前田さんもそんな文学畑に進出した劇団主宰者の一人。(劇団「五反田団」を主宰)この本には小説『逆に14歳』とシナリオ『お買いもの』の二作品を収録。出版された時に図書館に予約し...
若手劇作家の書く小説がこのところ人気で各文学賞にもよくノミネートされたり、受賞したりしている。この本の著者・前田さんもそんな文学畑に進出した劇団主宰者の一人。(劇団「五反田団」を主宰)この本には小説『逆に14歳』とシナリオ『お買いもの』の二作品を収録。出版された時に図書館に予約していたのだが、ようやく今頃になって順番が回ってきた。読み始めて、あれっと思う。冒頭の『逆に14歳』は中編の小説なのだが、まるで老年の小説家の脳内会話に付き合っている気分。独り言のような、耄碌したぼけた味わいが新鮮で、まさかこれが若手の作家の書いたものとは思えない。まるで、老化現象を自ら体験したかのような書きっぷり。身近なところにモデルでもいるんだろうか?『お買いもの』も、老夫婦のかみ合わない会話と孫娘のしゃきしゃきぶりが対照的で佳品。二作品共にカメラ好きの老人が描かれており、著者もかなりのカメラマニアなのではないかと推測する。
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逆に14歳表題にやられちゃった。14歳というキーワードに惹かれ、少年が活躍する物語かと想像していた。「逆に」という言葉の重要性に気付いたのは読み出して数分後だった。そう言えば表紙の絵は、、、少年が主人公の物語は、いくら頑張っても自分がその立場にはなれないもんですよね。そう言えば、...
逆に14歳表題にやられちゃった。14歳というキーワードに惹かれ、少年が活躍する物語かと想像していた。「逆に」という言葉の重要性に気付いたのは読み出して数分後だった。そう言えば表紙の絵は、、、少年が主人公の物語は、いくら頑張っても自分がその立場にはなれないもんですよね。そう言えば、子供の頃に読んだ本の主人公は、たいていの場合自分より年上で、「自分もいつかこんな大人になりたいものだ」と思ったものでした。私の年齢になると子の本ぐらいが、その様な気持ちにさせてくれると思うと、喜んでいいのか、はたまた、悲しまなくてはいけないのか?老いていくということを楽しんでいる姿に、これから確実に自分が迎えるであろう将来をみました。まあ、考えさせられます。
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司郎兄貴の新刊です! 今朝の新聞(何紙か忘れた)にちょっと載ってました。 「お買い物」が良かった。 可愛いお話やな~、と。 ドラマ観たいなあ。
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2010.03.14 日本経済新聞で紹介されました。 2010.04.04 朝日新聞に紹介されました。
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