石油国家ロシア の商品レビュー

マーシャル・I.ゴールドマン【著】,鈴木博信【訳】

2013/11/04

類書ヤーギンの著書を思い浮かべたが、この本は一冊丸ごとロシアを、主にプーチン政権時代についてよく解説しています
ガスプロムを筆頭にロシアエネルギー企業については一番よくまとめられているとおもわれます

2010/07/05

ロシアの石油、天然ガスにまつわる国家戦略を、政治と歴史の両面から詳細に見ていくことができる本。ロシアの近代史として読んでも面白いのではないか。

ロシアの資源については、一時期世界最大の産油国であったなど、その豊富な資源と原油高が重なって、国の成長に寄与している。1998年のロシア危機は記憶に新しいが、借金はすっかり返済され、2007年には世界第3位の外貨準備高を誇っている。（1位は中国、2位は日本。）ロシアは、世界最大の天然ガス産出国としても知られ、パイプラインを通じて欧州に供給している。中東依存度を低め、資源の安定的確保に努める欧州諸国にとっては、ロシアとは切れない仲に既にいる。

実はこの構造こそが、欧州各国が抱えているリスクでもある。ガスプロムと呼ばれる天然ガスの生産・供給会社は実質的には国有化企業であるとも見られ、ガスプロムの発足、成長の歴史を辿ると、そのリスクに目をつぶる訳にはいかない。

本書が「ロシア病」と名づけるロシアの問題はとっても衝撃的だ。ソ連崩壊後の企業や権益の私有化プロセス、プーチン氏による再国有化プロセスなどは、報道などで耳にしたことはあっても、通しでなぞっていくと大変なショックを覚える。一連の話に触れていくと、資本主義に移行したとは言え、西側諸国が期待する信頼に背く可能性があるというのがロシアなのだと思わざるを得ない。

BRICsからイメージされる「成長」「活力」「新しい」といった言葉とは対極にある、旧ソ連の体制や制度、慣習からいまだに目をそらすことができない。そんな現状に、強い違和感を覚える。国のGDPの過半が資源によって生み出されているという事実から、そして資源政策は国策に近い（すくなくともプーチン氏の影響力を持ってすれば）ことから、一人の人間、政府の意向が大変大きく作用している。

本書は、ロシアを、政府の目線、特にプーチン氏の人物像を通じて見たもので、国民の暮らしぶりや経済という目線ではレポートしていない。ロシアにも人口減、貧困、地域間格差、腐敗などが社会問題化しているようで、そうした角度からもロシアについて掘り下げてくれると、エネルギーに依存したロシアの特徴をより理解できるのではないか。

参考（ボクのブログより）：http://d.hatena.ne.jp/ninja_hattorikun/20100705