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深重の橋(下) の商品レビュー

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3件のお客様レビュー

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2016/02/17
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

うーん正直読みづらかった。歴史書やその他の資料からの抜粋部分がかなり多く、そこを読み込むともちろんそれなりに若干追加の情報は得られるのだが何せそれが古文なので読むのはつらい。飛ばしてもそのあとに説明があるのでこのやり方で書かねばならなかったのか(彼女の他の本を読んでいないので彼女の基本の手法であるのかは不明)はわからないが、残念ながらこれだけ読みづらいと人にお勧めできるものにはならないなあ。でも読むと応仁の乱の前後の京都之様子がかなりわかり、京都を見る目が少し変わる。例えばその時代には京都は荒れに荒れていたので藤原定家の住んでいた家の周りにも死体があふれていて、鴨川では鴉があつまりそれらをついばんでいた様子であったそうで、いまの様に川を眺めての食事などとんでもない状況だったのがよくわかる。大文字焼きも伝承では足利義政が戦火のもと亡くなった武士や当時から出現した傭兵であった足軽、襲われた庶民などの鎮魂の為に始めたとの情報も得られたりと応仁の乱前後の京都の様子が上下巻を読む進めると実によくわかったのは収穫だった。ただ物語の中心である、乱世の中人買いに売られ、湯屋に売られた少年の不屈の処世の様子と出世とはうらはらの哀しい恋しい人や生き別れた実の子にふりかかる悲劇などのお話が前述のような読みにくさの為に今ひとつ心に迫ってきにくかったのが残念ではあった。でもこの作者の他の作品は是非読んでみたい。なぜなら著者がふと見つけた歴史資料の中に潜む無名の人間をほんの少しの情報からその想像力をもってしてあざやかな人間像を作り出す力には感銘したので。

Posted byブクログ

2013/08/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

澤田ふじ子さんが29年前に読んだ本に激しい衝撃を受け、この中の一人の人物『宇野玄周』に創作意欲をかき立てられその人物をモデルに創作した小説、舞台は室町時代、応仁・文明の乱の頃。《奴隷》として売られた牛、その才を見込まれ武具屋に引き取られる。激化する守護大名家の勢力争い、度重なる凶作と飢饉、頻発する土一揆。日本の文化を誕生させた将軍・足利義政の隠蔽的擬態。やがて牛は京都を焼き尽くす応仁・文明の大乱の渦中へ身を投じるが、そこにはももとの間に生まれた息子と悲劇的な対面という邂逅が待ち受けていた……。

Posted byブクログ

2010/10/27

京を焦土と化した応仁・文明の大乱、前夜。人買い商人の手により十五歳で湯屋へ売り飛ばされた少年「牛」の数奇な運命。(帯より)その時代に被差別の立場に置かれていた人々の息づかいを見事に蘇らせた澤田さんの想像力はいつものことながらすばらしい。造園の創始者 又四郎が登場する。それにしても...

京を焦土と化した応仁・文明の大乱、前夜。人買い商人の手により十五歳で湯屋へ売り飛ばされた少年「牛」の数奇な運命。(帯より)その時代に被差別の立場に置かれていた人々の息づかいを見事に蘇らせた澤田さんの想像力はいつものことながらすばらしい。造園の創始者 又四郎が登場する。それにしても、たった数行の古文書から、これだけの物語を編み出す筆者と同じ時期に生きていることの嬉しさよ。

Posted byブクログ