自己言及テキストの系譜学 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
思想や社会学などにも造詣が深い筆者が「自己言及」をキーワードに日記を中心とした平安文学の解釈を提示した論文集。 自己言及の徹底によるオリエンタリズムの克服、個別作品の解釈。 論文をあまり読んだことないテキストについての論であったので、個人的には学ぶことが多かった。 私はテキスト解釈には人文系の知を総動員しなければならないと考えているので、筆者のように哲学の書などを注に引きながら論文を書けるようになりたいと思っている。が、思想などの方に無理にテキスト解釈を寄せている節が感じられないわけではない。紙数の関係もあって省略されたであろう解釈の道順がみたい。 私が在学中、師匠が「源氏」の注釈書の一つに儒教や仏教の枠組みで解釈したものに触れ、「現在から見るとその荒唐無稽さが分かる、しかし、人文知を動員してテキスト解釈を行う現在の我々も大同小異なのかもしれない」といったようなことを言われていたのが常に私の中にはある。その言葉を思い出しながら読んだ。
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