聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話(18) の商品レビュー
鬼の正体、双子座の兄弟喧嘩、これは原典を越えた感じですねぇ。元の作品があるからこそ、元の作品に縛られるけど、それ故に深く描き込めるということでしょうか。
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カノン島の鬼デフテロスの奥行きのあるバックボーンが明らかになった巻。逆賊になった兄の為だけに生きていたと云っていい彼の命と引き換えに、アスプロスが正気になったのは救いの展開でした。
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ようやく最新刊まで読み終わったので、シリーズの感想をまとめてこちらに。 読み始めた当初はやはりオリジナルの印象が強いせいか、絵の線が細すぎるような気がしてしまったり、『聖闘士星矢』と銘打っているとはいえ原作者の許可を得た公式パラレルストーリーな訳だから、もうちょっと黄金聖闘士の...
ようやく最新刊まで読み終わったので、シリーズの感想をまとめてこちらに。 読み始めた当初はやはりオリジナルの印象が強いせいか、絵の線が細すぎるような気がしてしまったり、『聖闘士星矢』と銘打っているとはいえ原作者の許可を得た公式パラレルストーリーな訳だから、もうちょっと黄金聖闘士の設定で遊んでみても良かったんじゃないかとか…要は、そこまで車田黄金のヴィジュアルを踏襲する必要はなかったんじゃないかとか、そんなちいさなことがいろいろと気にかかってしまった部分もあったけれど、全体としてみれば「星矢の熱狂的ファンによる愛ある二次創作」という感じで楽しく読むことができた。ちょっと気になったのは、これを気に入って読んでいるという人々は、オリジナルを知らない新規読者と、車田版からの旧来の読者とでは比率がどのようになっているのだろう。普通に考えれば後者が9割を占めて当然なのだが、この作品に関しては「外伝」としての完成度が非常に高いだけに、案外前者の割合が高いのではないかという気がしている。それだけに、もうちょっとこの作者の好きにキャラデザをいじっても良かったんではないか、そうしたらそうしたでまた面白く描けるだけの力がこの人にはあったんではないかと少しもったいない気もしてしまうが、彼女自身がオリジナルの熱烈なファンのようだし(そこが作画・ストーリー展開からひしひしと伝わってくるのが愛おしい)その辺りは原作の車田先生との擦り合わせの都合もあるだろうから、読者は余計なことなど考えず、ただ「すげえ!」と感動しながら読むのが一番なのに違いない。 という訳で、先ほど新規読者云々と書いたのに矛盾するようだが、この作品は作者としてはオリジナルの洗礼を既に受けた読者向けに発信しているものなのだろう。もちろん車田星矢を知らずとも面白く読むことはできるが、個人的には「ここは原作を意識して変えている」とか「ここは原作のあのシーンを彷彿とさせる」なんてことをいろいろ考えながら読むのが一番楽しい読み方だと思うし、感慨もひとしおだと思う。その筆頭として挙げられるのが、車田星矢ではなぜか一貫して不当な地位を与えられ続けた蟹座と魚座の今作における華麗なる復権だ。これはオリジナルを知らない人にはただのかっこいい蟹座と魚座聖闘士に過ぎないのが、知っている人にとっては「聖衣にも見捨てられたあのデスマスクが…」とか何とかそれだけで目頭が熱くなってしまうような展開なのである。ただやはりと言うべきか、十二人もいれば目立つ奴もいるし、反面パッとしない奴が出て来るのも事実で、個人的にはオリジナルで好きだった水瓶と蠍のストーリーに今作ではあまり燃えることができなかったのが残念だった。特に水瓶に関しては、シベリア師弟伝統の身内バトルであったにも関わらず、いまいち本人と友人のキャラに感情移入することができずに、あの辺りは作品そのものもやや低迷気味になっていたような気がして、読み進めるのが少々しんどかった。その分、射手座からの脅威の盛り上がり(!)には本当に驚かされたけれど…オリジナルのアイオロスも十分美味しいが、今作のシジフォスはようやく戦闘シーンや必殺技にも恵まれ、聖闘士の長にふさわしい壮絶な最期を遂げて、キャラクターに限って言えば個人的にはオリジナルよりも好きになれたパターンの一つかもしれない。その後の童虎、今巻の双子座兄弟を巡る緊迫したドラマにも、水瓶・蠍辺りで買い続けるのをやめようかな、と萎えていた気持ちが一気にどこかへ吹き飛んだ。とりあえず、15巻ぐらいから引き続き、シリーズ完結までは読み続けたいというテンションに今はなっている。少なくとも、天空に浮かんでしまったイタリア半島がいつ海上に戻ってくるのか(あの辺りイタリア国民の皆さんはどう思われているのだろうか…)事の次第が判明するまでは諦めず追い続けたい。 最後にもう一つ、上で触れた作者自身のオリジナリティに関連して、話を引っ張っていく役割のペガサスが、ちゃんと主人公らしく(笑)意図して大事にされている様子は読んでいて本当に安心する。この作品はオリジナルと違い青銅というよりは黄金の物語だから、どうしても格下の青銅が諸先輩方の影に回りがちになってしまうのは仕方ないけれど、後世の星矢に続く「ペガサス聖闘士の宿命」という設定がここでうまく機能して、テンマの出番を保証するよすがとなっているのはとても良かった。テンマもサーシャもアローンも、形は違えど自らの決意にひたむきで、見ていて本当にいじらしくなる。 それにしても、何十年という時を経てこれだけの二次創作を生み出す原作の影響力とは、本当に計り知れないものだったのだとしみじみ感じ入る。賛否両論共にあるだろうが、これも一つの「星矢」として今後も小宇宙を燃やしつつ読んでいきたい。
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