嘘から出たまこと の商品レビュー
何を書き何を書かないか。その主張は、その語りかたを決める。そこらへんのイマジネーションのある作品が選ばれているようだ。しかしながらその完成度よりも、語りかたの上手さは物語を面白くさせる。物語の沈黙の中にちょっとした真実はあるのかもしれない。
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[関連リンク] Twitter / chinoboshka: 私なら『嘘…』に: https://twitter.com/chinoboshka/status/220160058552631298
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最初のエッセイ「嘘から出たまこと」が素晴らしい。この部分だけでも買う価値がある。小説、フィクションの本質を見事に捉えて提示している。 「(小説は、)単に嘘をつくだけではなく、正体を隠すこと、仮面をかぶることによってのみ表現できる興味深い真実を語るのである。...人間は自分の運命...
最初のエッセイ「嘘から出たまこと」が素晴らしい。この部分だけでも買う価値がある。小説、フィクションの本質を見事に捉えて提示している。 「(小説は、)単に嘘をつくだけではなく、正体を隠すこと、仮面をかぶることによってのみ表現できる興味深い真実を語るのである。...人間は自分の運命に満足できないもので、ほとんど全員が ― 金持ちも貧乏人も、天才も凡人も、有名人も無名人も ― 今と違う生活に憧れる。そんな欲求を ― イカサマな形で ― 静めるためにフィクションは生まれた。すなわち、誰もが求めてやまぬ理想の生活を提供するために書かれ、読まれるのがフィクションである。小説の根底には、いつも悪あがきが煮えたぎり、欲求不満が脈を打つ。」 「現実生活の不満は、文学によって時に静められ、時に煽り立てられるが、決して真の意味で改善されることはない。我々の持つ空想癖はまさに悪魔の施し物かもしれない。今の自分と理想の自分、持っているものと望むものの溝を常に広げているのだから。 しかし我々は、抜け目ない想像力のおかげで、限りある現実と際限ない欲望との乖離を和らげる妙薬、すなわちフィクションを備えている。フィクションによって我々は、自分を失うことなく自分を乗り越え、他人になりきることができる。フィクションのなかに溶け出して我々は多重人格者となり、自分以外の多くの人生、真実の枠に囚われていれば不可能な多くの人生を、歴史の牢獄から抜け出すことなく試すことができる。」 「嘘から出たまこと」の後は、ジョサによる名作の書評になっている。一流の作家による一流の作品の書評なので面白くないわけが無い。
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