汐のなごり の商品レビュー
「海上神火」「海羽山」「木洩陽の雪」「歳月の舟」「塞道の神」「合百の藤次」。 著者の故郷の山形県酒田市がモデルと思われる北前航路で栄える水潟の街、街中を流れる大船川(最上川)、そして北方にそびえる海羽山(鳥海山)を舞台にした6編です。各編の関連は無く、職業も女衒、商人、廻船問屋、...
「海上神火」「海羽山」「木洩陽の雪」「歳月の舟」「塞道の神」「合百の藤次」。 著者の故郷の山形県酒田市がモデルと思われる北前航路で栄える水潟の街、街中を流れる大船川(最上川)、そして北方にそびえる海羽山(鳥海山)を舞台にした6編です。各編の関連は無く、職業も女衒、商人、廻船問屋、町奉行、米の相場師など様々です。 しかし見事な文章です。最初の数行で、物語の中に深く沈んで行きます。職種が多様なためその説明に行数を取られやや冗長感が有るのは残念ですが、全体として完成度は高く、辛い状況を抜け出して前向きに終わる話が多く、読後感は良い。2009年の直木賞候補作。 北重人さん、2004年に初出版され2009年に亡くなりました。出版されたのはわずか9冊。 ポスト藤沢周平は一般的に葉室麟と言われていましたが、その葉室さん自身は藤沢周平の後継者を北重人だと考えていました。確かに生地が近い事も有って藤沢さんを彷彿させる作風です。ただ余りに近すぎ、既視感のようなものを感じるのが欠点かも。しかし、早世されなければきっと独自の良い作品を書かれたろうと残念に思います。 自分の本棚から抜き出した本なのですが、何故か読書記録が残って居ません。買った本は意地でも読む方ですし、読めば感想を書きます。まして大好きな北さん、読み始めたら読み終わったはずです。内容的にも記憶に無いので、あるいは何かに取り紛れて手を付けなかった本なのかもしれません。
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文体がとんでもなく美しい。情景がズバズバ頭に浮かんでくる。そして短編ひとつひとつが面白すぎ。『合百の藤次』はすぐに読み直してしまった。こりゃ他作品が楽しみだ。
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- ネタバレ
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北重人さんの短編小説集『汐のなごり』を読了。酒田ではと思われるような東北の北前船が泊まった町を舞台にした物語を集めたもの。それぞれの物語は水揚げされて料理屋の女将だったり、何十年も仇討ちの相手を追い続け最後の最後にその仇討の相手ではなくその黒幕を知る事になった武士、自分を育ててくれた米の相場師がある相場師に罠をかけられ地元とを去るのだが、何十年もたった後またその相場師の息子に相場の危機で救われるとともに、その息子の相場での敵討ちの様を見る事になる人物などそれぞれが強い意志を持っていきている主人公がであうそれ以上に固い意志を持ち事を成し遂げる人物にそれぞれの物語の中でこころあたたまる関係をもつ様が描かれている。著者はもとは一級建築士で何人も人を雇う経営者であったがバブル崩壊後リストラをせざるを得なくなったときから著作にチャレンジし始めたユニークな作家であるが、物語の構成の妙はかれの元の仕事で培った能力が生きているのかもしれない。疲れないで読める人情ものを探している方にはおすすめです。
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結末がほっとする方向で終わるので、安心できる。 私のふるさとが舞台なので、それも十分楽しめた。 もうすこしドラマ性の色が濃くてもいいと感じた。
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北前船の着く湊町を舞台にした6つの短編。 確か初めて読む作者だけど、空気が感じられる文章だなあ…なかなか良かったです。最初の話が一番好き。
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一つ一つはなかなかだったけれど、読み終わってみて、特別な読後感や印象に残るようなインパクトは感じられなかった
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