これから資本主義はどう変わるのか の商品レビュー
本書によらず、これからの資本主義や世界における経済の役割に対する考え方はある程度の方向を定めて進んでいくように思う。何よりこの本の著者が少なからず世界を引っ張って(きた/いる)人であるから、自ずと世の中がそれについていく形をとるであろう。 第二章では螺旋的な発展について述べられ...
本書によらず、これからの資本主義や世界における経済の役割に対する考え方はある程度の方向を定めて進んでいくように思う。何よりこの本の著者が少なからず世界を引っ張って(きた/いる)人であるから、自ずと世の中がそれについていく形をとるであろう。 第二章では螺旋的な発展について述べられている。これは俺も常々疑問を感じていた”歴史は繰り返す”という世間一般の浅はかな発言にも通じる。諸行無常というように、ただ円を描いてそこに落ち着くほど単純なものなら発展なんかしてきていない。積み重ねとはそういう事だろう。そしてその単純ではない複雑系においては「これだ」という一つの基準でものを語れない。例えば金だけでということで、つまりはハイブリッドのように二種類(若しくはそれ以上)で測る必要があるわけである。加えてその二種類が双反するものであれ相互浸透により互いに親和する。 三章ではその事例として巨大多国籍企業のソーシャルビジネスを紹介している。どういうことかは本書で確認してもらおう。 六章の食料危機についての部分は、アイスランドの火山噴火にみても真剣に考えなければならない。空間的な近さというものがなければ政情や他の理由によらず供給がストップしてしまう。現代では配送手段があるものの距離を縮めたわけではない。特に日本は島国だからその辺は考えないといけない。ただ、だからと言って自給率を上げるかはまた別の話、この章でもそこには触れていない。 また、特に俺が興味を持ったところがあった。WIRの存在である。これはスイスのWIRという組織が作ったシステムで、企業間取引に使われる補間通貨のこと。通常よりも金利が低く調達コストを下げることが出来る。メリットとしては景気低迷時の調達難や高金利時の負担を吸収出来る点、そして会員間の信用強化に寄与する。この発想というのはとても重要に思える。なぜなら金が信用であると言う本質をとらえているから。こういうことこそこれからの資本主義には大事になってくる。 同章ではもう一つ費用対効果の高い事例が紹介されている。サーベアである。簡単に言えば子ども手当みたいなものであるが、比べ物にならないぐらい賢い使い方である。この部分をどこかの党にでも読んだ人がいれば、雑な無償化で税金を消却することも無かったのではないかと考えてしまう。 八章では社会起業家について多く書かれていた。なかでもいい表現を見つけた。 ”ゆりかごからゆりかごへ” 墓場ではなくゆりかごへというのがすばらしい。今までの単世代の行いではなく、まさにサステナブルな意識。それが欠けては元も子もない。長く続くだけがいいこととは思わないけど、本当に子がなくなっては、ましてや孫のことなんて誰も言えない。 十章にはその社会的企業家のもたらすものについてより定義的なものを示し、どういうところに存在(する/出来る)かといってところに触れている。 最後の章では"合理的なシンプル"として人生の豊かさに言及している。要は資本主義の行方を予測するのが本書のテーマであるならそこまでは言わないのかもしれない。しかし、ビジネス書と違い、その枠を越えて考えを巡らせようと思うなら是非一読してみてはどうか。資本主義にのまれないためにも。
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