ウルフ谷の兄弟 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
物語全体としては、ミステリーというか、ウルフ谷で起こった殺人事件について書かれているのだけれど、本質的な裏テーマとしては、両親のいない(もともと一人親で、このほど母を亡くした)兄弟が行き場所をなくし、たらい回されて、やはり最近に妻を亡くした伯父のもとへ行くことになったことから起こる問題に焦点がある。 兄のバートは12歳。弟のアーニーは8歳で、素直で夢を見る性格。バートは酔っぱらってばかりの伯父も含めて面倒をみなければならなくなり、掃除や料理などの日常的な家事全般から、事件が起きて伯父が出て行ってしまってからは、生活費をどうするか、という問題にまで直面していくことになる。母が亡くなる前にも、母の看護や家のことをしていたらしい節もあり、今風の言葉で言うと「ヤングケアラー」と言える。この問題は、実は、殺人事件が解決し、伯父が戻ってからも「解決」しない。 おそらく、同じ谷に暮らす、事情を抱えた「王さま」や「オールド・レナ」と、工夫して協力しながら生きていくことになるのだろうな、とは予想される。地域と一緒に生きていく。それが答えなのかもしれない。 …など、つい、現実の社会について、考えてしまった。
Posted by
本書はアメリカでは絶版になってしまったので、教文館のナルニア王国書店で見つけたときは「買い」の選択肢しかなかった。しかも翻訳版は原作よりもカバーデザインがいい。 この本は親を亡くして、母の姉から見放されたみなしごの兄弟が叔父の住む田舎町へ引っ越すところから始まる。兄のバートはy...
本書はアメリカでは絶版になってしまったので、教文館のナルニア王国書店で見つけたときは「買い」の選択肢しかなかった。しかも翻訳版は原作よりもカバーデザインがいい。 この本は親を亡くして、母の姉から見放されたみなしごの兄弟が叔父の住む田舎町へ引っ越すところから始まる。兄のバートはyoung carer (ヤングケアラー)である。この言葉は大人を介護する子どもと定義されがちだが、親を亡くして幼い弟の面倒を見るバートをyoung carerと言わずに何と言う。(アル中の伯父がいるので、通例のyoung carerではあるが、チャーリー伯父さんは物語の中盤から兄弟をウルフ谷の家に置き去り行方をくらます。)バートは四六時中夕飯の献立や家計の配分を計算する。いずれこの街を離れるかもしれないからと、仲良くしてくれる同級生と友達になるのを躊躇う。バートの小さい頭は心配事ばかり。12歳なのに親の役目を果たさなければならない。泣いてまうやろ。 一方、弟のアーニーは想像力豊かで、先入観のない天真爛漫な子どもだ。ウルフ谷には狼男がいると信じて怖がり、スプーンを二つ首からぶら下げて十字架をいつでも作れるようにする。十字架が効くのは吸血鬼というバートのツッコミは無視して。だけどそばにいれば、兄の杞憂を感じられずにはいられない。彼も彼なりに兄の苦労を和らげようと、叔父のためにクリスマスプレゼントを用意する。これが兄を窮地に追いやるのだが、それは本書で。秋から冬にかけてハローウィーン、感謝祭 (Thanksgiving)、そしてクリスマスという季節行事を盛り上げようとするアーニーの無邪気さがゴシックな不気味さが漂うウルフ谷と対照的に展開する。
Posted by
この「海外ミステリーBOX」シリーズはかなりオススメ。 人には好みがあるから他人に本を勧めるってことを普段ほとんどしないのだけれど、これは自信を持ってオススメできます。 真摯で上質な本格サスペンスが楽しめます。 30〜40年ほど前に「児童図書館SOS」シリーズで出版さていたものの...
この「海外ミステリーBOX」シリーズはかなりオススメ。 人には好みがあるから他人に本を勧めるってことを普段ほとんどしないのだけれど、これは自信を持ってオススメできます。 真摯で上質な本格サスペンスが楽しめます。 30〜40年ほど前に「児童図書館SOS」シリーズで出版さていたものの改訳新版なので、そちらが手に入ればそれでもOK。 改訳前のシリーズ名からも分かるようにYA向けで書かれたものなので非常に読みやすい。 今風の複雑怪奇な難解すぎる物語でなくても面白いミステリーはあるのです。
Posted by
児童文学だが、表紙とあらすじに興味をもって読んだ。児童文学としてのミステリーにしては質が高く、少年達の自立具合に感心するものがあった。軽く読めた。
Posted by
1984年の改訳新版 母親がなくなり、おじさんに預けられることになった兄弟。 昔はステキなおじさんだったのに、どうやら今はアル中みたい・・・ しかも、おじさんの家は森の奥の谷にぽつんと建っている 変な声は聞こえるし、殺人事件はおこるし、こんな所で生きていかなければならないの? 必...
1984年の改訳新版 母親がなくなり、おじさんに預けられることになった兄弟。 昔はステキなおじさんだったのに、どうやら今はアル中みたい・・・ しかも、おじさんの家は森の奥の谷にぽつんと建っている 変な声は聞こえるし、殺人事件はおこるし、こんな所で生きていかなければならないの? 必死に生きようとする2人の姿に感動 中学生~
Posted by
- 1