学びのための英語学習理論 の商品レビュー
英語教育を支える理論的な側面について、言語学関連(音声学、統語論、語用論)と第二言語習得論の研究成果と、教育への示唆を述べたもの。「我が国の学術研究と、英語教育実践との橋渡し」(p.280)としての役割がそれなりに果たされており、現職教員や英語教育分野を専門にしようとする学生には...
英語教育を支える理論的な側面について、言語学関連(音声学、統語論、語用論)と第二言語習得論の研究成果と、教育への示唆を述べたもの。「我が国の学術研究と、英語教育実践との橋渡し」(p.280)としての役割がそれなりに果たされており、現職教員や英語教育分野を専門にしようとする学生にはとても有益な本だと思う。 学術研究の成果をまとめたもの、ということで、ある1つの方法や理論に立脚したものではなく、色々な見方や説があることが勉強にできる。例えば、「語彙サイズテスト」で語彙を多く知っていることと、英語全体の成績の良さは比例する、みたいな説明だか実験結果を読んだことがあるが、「学習者は、英語力を獲得している途上にあり、英語運用は不安定なため、知識として持っている語彙が、英語運用能力を正しく反映しているかを立証することは難しい。」(P.124)として、冷静に考えられている。同じ語彙の話で、例えばある先生は「単語は発音しながら書いて覚えた方が効果的」と言い、おれも実はそう指導しているのだけれど、「教師は覚え方と注意点を教示はできても、発音しながら覚えるか、黙って書いて覚えるかは学習者の選択に任せる。(中略)視覚処理優勢型、音声処理優勢型、身体処理優勢型かによっても学習方法は様々であり、語彙学習の唯一無二の方法は見当たらない。」(p.122)とされている。また、中学教師の定番、鏡文字の出現についての考察もあって、面白かった。結局、原因も対策も分からない、というのが結論だが、分かっていないということが分かって良かった。他にも、上の話で出てきた「3つの優勢型」については、調査法を示してくれているので、ぜひクラスでアンケートを取ってみたい。ちなみに個人でも学習段階が進むにつれて優勢型が変わるということはあるのだろうか、とか気になることもある。 この本には続編があるそうなので、そちらも読んでみようと思う。(2017/09/10)
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