レダ 新装版(2) の商品レビュー
『レダ』ではいくつかの重要な哲学的問題が提示されている。 自由、個と社会、自己の固有性・唯一性など、それはすなわち、思春期にわれわれ皆が多かれ少なかれ衝突する問題である。少年の「ぼく」や、イヴが独白し、あるいは周囲の人々が語りかける言葉にはいくつもの大問題が関わっているのだ...
『レダ』ではいくつかの重要な哲学的問題が提示されている。 自由、個と社会、自己の固有性・唯一性など、それはすなわち、思春期にわれわれ皆が多かれ少なかれ衝突する問題である。少年の「ぼく」や、イヴが独白し、あるいは周囲の人々が語りかける言葉にはいくつもの大問題が関わっているのだが、読者はそれを共感を持ってなぞっていくことができるだろう。 「理想の社会」ファー・イースト30には何かが欠けている。人が人を害することがないように、強制力を伴わずに、極めて周到に管理されたシティ。II巻では、そこに欠けているものは、人と人とのなまの交流ではあることが示唆される。シティの人々は洗練されたカンバセーションの技術を使って、他人と真に関わらないようにしている。逆にいうと人と深く関わりを持たずになおかつ社会の中にある程度の係累を保ちたいタイプには具合のいい社会だとも思う。人間同士が衝突を繰り返すこの世の中を考えれば、植物のようにフラスコで孵卵し、血縁関係を排除した穏やかな環境の中ではぐくまれていくシティの人間たちの姿は、人類の問題のひとつの解決法であることに違いはない。ロハスなどといった考え方も終局的にはこのような植物型社会に行き着くのではないか。それでは嫌だと思っているのは実は作者であって、作者が強く他者を希求して叫んでいるのかと思えてくる。 シティを愛し、シティと一体化したいという望みにまどろんでいた「ぼく」は、本巻で急に目覚め、シティの重要人物と丁々発止、議論を戦わせたりするのだが、あまりに成長が早い。いまだ目覚めたことがなかった者が新たに目覚めるにはもっともっと時間がかかると思う。まさに作者の生き霊が「ぼく」に憑依したかのようだ。
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今の社会を反映しているような、シティ。 イブ レダ アウラ 3人を翻弄しながら物語は 進んでゆく。
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