探究この世界 2010年2・3月 「怖い絵」で人間を読む の商品レビュー
絵画を歴史として読み解いて観ると、絵の見方も違ってくる。見ただけではどこが怖いのか全くわからないものもあるが、中野さんの説明で恐ろしさが分かってくるのだ。 例えば、ボッティチエリ『ヴィーナスの誕生』も、中野の分析では「ヴィーナス自身の身体もそうです。完璧な肉体美とは異なり、微妙に...
絵画を歴史として読み解いて観ると、絵の見方も違ってくる。見ただけではどこが怖いのか全くわからないものもあるが、中野さんの説明で恐ろしさが分かってくるのだ。 例えば、ボッティチエリ『ヴィーナスの誕生』も、中野の分析では「ヴィーナス自身の身体もそうです。完璧な肉体美とは異なり、微妙に歪み、胸はぐにゃりと長く、極端ななぜ肩で、胸が窪んでいる。これはモデルが肺結核だったから(略)美と病、悲しみと歓喜、純と濁、全てがないまぜになり、画面全体が華やかでいながら闇を秘めている」どうです、読んだ後と読む前とでは絵の見方が変わってくるでしょう。
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心弾むハプスブルク家の名画との出会い【赤松正雄の読書録ブログ】 出会いはやはり本屋の店頭で、だった。NHKの教養講座のテキストがおいてあるコーナーで発見した。中野京子『「怖い絵」で人間を読む』である。2月から3月まで放映ということなので早速テキストを購入、同時にテレビでもご...
心弾むハプスブルク家の名画との出会い【赤松正雄の読書録ブログ】 出会いはやはり本屋の店頭で、だった。NHKの教養講座のテキストがおいてあるコーナーで発見した。中野京子『「怖い絵」で人間を読む』である。2月から3月まで放映ということなので早速テキストを購入、同時にテレビでもご本人の語りを聴いてみた。これまで知らなかったがドイツ文学者の中野さんは、『怖い絵』シリーズ三冊を出しており、同時にオペラや映画にも造詣が深い(「怖い絵」は本当に怖いものと、あまり怖くないものとに分かれるが・・・)。絵を通じて中世から近代にかけてのヨーロッパ史のさわりに触れることができる仕掛けになっている。絵の怖さたるや想像を絶するが、王家伝説の血の濃さを保とうとするあまり数多の悲劇が起こったこともわかる。このあたりは、親が子を殺し、骨肉相はむ事例に事欠かない日本史も同様だ。人類共通の宿命といったところか。中野さんには『名画で読み解くハプスブルク家12の物語』という著作があり、これも合わせ読んだ。これまた実に興味深い。テレビと本と、どちらかといえば文章の方が深い。語りはいささか軽いタッチがすぎるのではないか。たまたまハプスブルク家に関わる絵画展は、京都や神戸で開催中であったり、これから開催されるとあって、絶好の誘いの書である。マリア・テレジアやマリー・アントワネットについて色々とわかる。こんないい手引き書はない。 時あたかも21日付けの神戸新聞に池田大作創価学会名誉会長の「神戸から生命の輝きを」と題する一文が寄稿されていた。偶然は幾重にも重なる。神戸新聞社が後援して開かれる「華麗なるオーストリア大宮殿展」の開催にちなんで書かれたもの。「民族の違いを超えて芸術家や工芸家などを大いに擁護し、宣揚してきた」同家を称えておられる。 「すべての生活者は芸術家である」とのたつの市が生んだ哲学者・三木清の言葉を引用され、「大震災から15年。神戸という文化の大宮殿から生命の輝きがはつらつと広がりゆく春が来た」と結ばれている。ひとつの展覧会にこれほどまでに期待する気持ちが高ぶることはかつてなかった。
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