悪い仲間/マカールの夢 他一篇 の商品レビュー
「マカールの夢」のみ読了。 「主は言われた。この地上にも本当に正義の人たちはいるのじゃぞ…彼らの眼は明るく[]余の前にもふさわしき香りを放つ[]それがお前<マカール>はどうだ…[]その方の顔は暗いな、と老いたる主はつづけらた[]だからわしは、わしの正直者たちを愛し、その方のご...
「マカールの夢」のみ読了。 「主は言われた。この地上にも本当に正義の人たちはいるのじゃぞ…彼らの眼は明るく[]余の前にもふさわしき香りを放つ[]それがお前<マカール>はどうだ…[]その方の顔は暗いな、と老いたる主はつづけらた[]だからわしは、わしの正直者たちを愛し、その方のごとき不信心者からは顔をそむけるのじゃ[]彼らの眼が明るいのは、マカールが流したほどの涙を流さなかったからです、その顔が明るいのは香水で洗うからです、また、きれいな服は他人の手で織られるからです。」 「彼はそこで己れのつらい生涯をくまなく振り返ってみた。彼はどうして今までこの恐ろしい重荷に耐えてこられたのだろう?彼がこれを負って来たのは、将来に依然としてなおも雲間の星のように期待がかすかに見えていたからなのだ。生きている以上、必ずやもっといい目にもあえるに違いない…が、今はもうぎりぎりの処に立っている。期待も消え失せてしまった…[]しかし老いたる主は彼に向ってこう言われた[]その方は地上にいるのではないぞ…ここではその方のためにも真実が見つかるぞよ…。マカールは愕然とした。彼の心には自らが憐れまれているという意識が生じた。すると心は柔らいだ。が、眼の前には己れの惨めな日々が、初日から最終日までずっと立ち並んでいたので、彼はさすがに自分自身が耐えきれぬほど哀れになった。そして泣き出してしまった…老いたる主もやはり泣いておられた……また年老いた僧侶のイワンも、若い神の下僕たちも涙を流し、広い、白い袖でそれを拭っていた。秤はたえず揺れつづけ、木の皿は次第次第に高く上って行った!……」(コロレンコ「マカールの夢」より)
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