越境する児童文学 の商品レビュー
著者は、1990年代から現代に至るまでの多くの児童文学作品に目を通しながら、そこに見られる新しい変化を「越境」というキーワードで表わし、ポジティヴな意味を認めようとしています。 岩瀬成子は、1977年に発表した『朝はだんだん見えてくる』以降、大人社会が構築した「子ども」という制...
著者は、1990年代から現代に至るまでの多くの児童文学作品に目を通しながら、そこに見られる新しい変化を「越境」というキーワードで表わし、ポジティヴな意味を認めようとしています。 岩瀬成子は、1977年に発表した『朝はだんだん見えてくる』以降、大人社会が構築した「子ども」という制度を解体する試みをおこなってきました。そして90年代には、佐藤多佳子『サマータイム』、川島誠『夏の子どもたち』、江國香織『綿菓子』、森絵都『リズム』など、従来の児童文学という枠組みを「越境」していくような数多くの作品が発表されるようになります。こうした新しい徴候に対して、児童文学の崩壊を嘆く声があるとしながらも、著者は既存のジャンルの枠組みを揺るがす果敢な挑戦を積極的に評価しようとしています。 さらに著者は、幼年文学に見られるナンセンスへの新しい感覚や、上橋菜穂子と荻原規子らのファンタジー作品などにも目を配り、児童文学の新しい潮流を手際よく整理しています。 ジャンルを攪乱するという戦略は、『ファウスト』を舞台にしたミステリの世界でも見られましたし、少し前までライトノベルにもそうした可能性はあったように思えます(あっという間にネタとパロディが「お約束」になってしまい、可能性は可能性のまま終わってしまった感がありますが)。本書で論じられていることについては賛同できるところが多く、興味深く読みましたが、児童文学に限定されない広い枠組みのもとで、いま一度考えてみたいと思いました。
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本書は2000年代の児童文学についての本。 山中智省さんの『ライトノベルよ、どこへいく』と並行して読んでた。2000年代はどっちのジャンルも、新しく変わっていってたんだなと思う。 こちらの方は作品について紹介していたので、ブックガイドとしても面白い本だ。 読みたい本が増えるよー...
本書は2000年代の児童文学についての本。 山中智省さんの『ライトノベルよ、どこへいく』と並行して読んでた。2000年代はどっちのジャンルも、新しく変わっていってたんだなと思う。 こちらの方は作品について紹介していたので、ブックガイドとしても面白い本だ。 読みたい本が増えるよー。 大学時代に読んでいた本があって懐かしかった。
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とても面白かったです。 1990年代以降に登場した作家の作品が多数、かつ好意的にとりあげられていて、 読みごたえがありました。 個人的に好きな作家さんや作品が、あちこちに出てきて楽しかったです。 それ以前の「児童文学の歴史」みたいなのもサラッと解説されているので、 旧来の流れを...
とても面白かったです。 1990年代以降に登場した作家の作品が多数、かつ好意的にとりあげられていて、 読みごたえがありました。 個人的に好きな作家さんや作品が、あちこちに出てきて楽しかったです。 それ以前の「児童文学の歴史」みたいなのもサラッと解説されているので、 旧来の流れを押さえて、それ以後の作品の意義、みたいなのもわかるし、 リアリズム作品、ファンタジー、幼年童話、それぞれに解説があり、 大変勉強になりました。 このところずっと「児童文学」ってなんだろう? とぼんやり考えているのですが、 いろいろ整理して教えていただけた感じです。 これから「児童文学」はどこへ行くの? というのが気になるところですが、 この本を読んだら、未来はわりと明るいような気がしてきました。 岩瀬成子、川島誠、ひこ・田中、佐藤多佳子、森絵都、いとうひろし、 上橋菜穂子、荻原規子、柴田勝茂、たつみや章、安富陽子。。。 などなどが取り上げられています。 児童文学がお好きな方は、きっと面白いと思います。
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