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感染症の中国史 の商品レビュー

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15件のお客様レビュー

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2020/04/13

本書が出たのは2009年だが、今回のコロナ事件で緊急復刊したらしい。たしかに、10年前の本ではあるが、現在の問題はほとんど出てきている。  中味はペストから天然痘、コレラ、日本住血吸虫病、マラリアと多岐にわたる。これらは日本や中国、それに世界が対面せざるをえなかった感染症で、これ...

本書が出たのは2009年だが、今回のコロナ事件で緊急復刊したらしい。たしかに、10年前の本ではあるが、現在の問題はほとんど出てきている。  中味はペストから天然痘、コレラ、日本住血吸虫病、マラリアと多岐にわたる。これらは日本や中国、それに世界が対面せざるをえなかった感染症で、これらがいかにして広まり、収束してきたか(なかにはまだ収束していないものもある)を詳しく資料を読むことで提示したものである。  こうした感染症は、文明社会がいわゆる未開社会へ運んだものもあるし(コロンブス)、その逆もある。どちらにせよ、人間が移動することでこうした病気は広まっていったわけである。グローバル化が引き起こした現象である。たとえば、香港で1894年に発生したペストは本来雲南起源のものだが、これがなぜ香港へ持ち込まれたかというと、雲南のイスラムを清朝の軍隊が制圧したときに持ち帰ったという説と、アヘン戦争で輸入が禁止されたアヘンを雲南でつくり、その輸送ルートでペストが発生したという説である。どちらにしても、人の移動がそこに関わっているのである。満州での流行では山東の苦力が運んでいったといわれる。  中国政府は最初これらに対し、自らなんらかの措置をとるのでなく、善堂という民間の組織に対処させた。しかし、それは手ぬるかったし、中国へ進出していた日本、ロシアの占有地域ではみずからこの衛生事業にかかわろうとした。そうなると、中国民衆の反感を買う。それは衛生事業を行うことによって、植民地を拡大しようと取られたためだし、実際そうであった。中国での衛生事業はその後、この外国勢力と中国政府の干渉とのせめぎ合いになり、最後は条約改正を成し遂げた中国政府が実権を奪い返すということになる。  この中で政府は盛り場へ等の立入を禁止するが思うようにいかないとか、中国人は満鉄に乗せるなという主張に対し、それでは満鉄が赤字になるからできないと反対するとかは今と同じだ。最後の日本住血吸虫病では、日本からも医師団が中国へ赴き、いっしょになってこの事業を推し進めるが、絶滅を記念して立てられた記念館の掲示には、そのことにふれていないというのもODAでの日本の貢献を無視したことに通じる。人間はあまり進歩していないのだと考えさせられる本である。それはともかく、戦後の日本の衛生学は、植民地衛生学の成果の上に発展したものである。

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2020/02/15

COVID-19騒動のさなか、図書館でタイトルが目に飛び込んできた。 検疫とか隔離とかの感染症対策と、通常の社会生活や人権との衝突は、今も昔もむずかしいもののようだ。英語の検疫=quarantineの語源は、むかしベネチアで病人がいないかを確認するため40日のあいだ船を港外に留...

COVID-19騒動のさなか、図書館でタイトルが目に飛び込んできた。 検疫とか隔離とかの感染症対策と、通常の社会生活や人権との衝突は、今も昔もむずかしいもののようだ。英語の検疫=quarantineの語源は、むかしベネチアで病人がいないかを確認するため40日のあいだ船を港外に留めおいたことからきているそうだ。 著者は感染症と社会のかかわりを論じたいようなのだが、「中国でのペストの流行では、列強諸国も中国の衛生行政に介入しました。ペストが政治化したのです」だけだとロジックが弱いというか、いまひとつハラに落ちるものがない。そのへんが物足りない。

Posted byブクログ

2011/05/08

切り口に脱帽。近代中国史を感染症撲滅の視点で見ていく。近代中国史、感染症撲滅というテーマは、どちらも読み物として面白い題材なんだけど、そこに関わった日本人も含めて、生々しい「時代の空気」みたいなものが伝わってきます。

Posted byブクログ

2011/04/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

[ 内容 ] 一九世紀末、列強に領土を蚕食されるなか、中国では劣悪な栄養・衛生状態、海外との交流拡大によって、感染症が猛威を振るう。 雲南の地方病であったペストは、香港や満洲に拡大し、世界中に広がることになる。 中国は公衆衛生の確立を迫られ、モデルを帝国日本に求める。 本書は、ペスト、コレラ、マラリアなどの感染症被害の実態、その対応に追われる「東亜病夫」と称された中国の苦悩とその克服に挑む姿を描く。 [ 目次 ] 第1章 ペストの衝撃(ペストのグローバル化―雲南・香港から世界へ;感染症の政治化―列強の思惑と国際ペスト会議) 第2章 近代中国と帝国日本モデル(公衆衛生の日本モデル―植民地台湾と租借地関東州;中華民国と「公衆衛生」) 第3章 コレラ・マラリア・日本住血吸虫病(コレラ―一九世紀の感染症;台湾のマラリア―開発原病) 終章 中国社会と感染症 [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]

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2010/02/07

公衆衛生において中国は「小さな政府」の方式、つまり民間に任せるやりかたをとっていたのがわかった。 それを国家がコントロールする「大きな政府」の方式に舵を切ったのが、日本の影響だったというのも興味深い。 中国史を感染症から眺めたとても興味深い内容。

Posted byブクログ